国分は創業300年の独立系食品問屋。連結売上高は1兆5000億円を超え、「大手総合商社と互角に渡り合える唯一の独立系卸」(流通業界に詳しい関係者)とされてきた。その国分がパートナーに丸紅を選んだことで、食品流通の勢力図が塗り替わる。
そもそも、「昨年まで、国分は三井物産と提携するとみられていた」(同)。過去、両社には資本関係があったためだ。
2007年に、国分は三井物産傘下の三井食品が苦戦していた北海道の事業を支援する形で引き取った。両社は、セブン&アイグループとの関係が深く、さらなる提携へ発展するとみられていた。
だがその後、国分がアジアへの進出で協業を望むも具体化しないなど、「ここ数年、両社の仲は離れていった」(関係者)という。
この隙に入り込んだのが丸紅だった。丸紅は、13年に出資していたダイエーの株をイオンに譲渡しており、手薄だった食品流通分野で行き場を失いつつあった。
ただ、食品部門の山崎康司執行役員がダイエーに出向したことで国分とのパイプができ、今回の提携を進める素地が整ったという。
国分との提携を確実なものにするため、丸紅は傘下にある菓子卸最大手の山星屋と冷凍食品卸のナックスナカムラを差し出した。
国分は、加工食品や酒類の流通は強いが、菓子と冷凍食品は弱い。11年から5カ年の中期経営計画では“食品卸のフルライン化”を目指して、菓子と低温物流を強化する方針を掲げていた。
そんな折の申し出は、パズルのピースがピタリと合うような、理想の補完関係になったのである。
小売りとの関係強化に躍起食品流通分野において川下は再編が進み、イオン、セブン&アイ、ウォルマート(西友)、CGC(中小スーパーの共同仕入れ機構)の4グループに収斂されつつある。
その結果、商社や卸は小売りから選ばれる時代になり、川下との関係強化に躍起になっている。
三菱商事は、傘下の食品卸を統合しイオンとの関係強化を模索中。セブン&アイをめぐっては、伊藤忠商事が三井物産のお株を奪っている。
そうした環境下における今回の提携は、国分が丸紅傘下の卸2社に出資する一方、丸紅は国分本体へは出資せず、新たに設立する「国分首都圏」に共同出資する形で、国分にかなり配慮している。
それでも食品流通で出遅れていた丸紅にとって、規模や商流を拡大させる足掛かりになったという意味で得たものは大きいといえる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)