千葉市建設局の元職員は東証1部上場企業の上下水道コンサルティング会社に対し、下水処理施設の設備更新に関する設計業務の予定価格を漏えい。官製談合防止法違反などの疑いで計7人が逮捕された。市担当者は「官製談合は当市としては初めて」と唇をかむ。
地方公共団体の職員が不正を働く官製談合が後を絶たない。公務員を取り締まる官製談合防止法が2003年に施行されて以降、摘発が強化されたこともあり、06年には福島、和歌山、宮崎県の各知事が摘発されるなど検挙事件数は急増した(下図参照)。07年には改正法が施行され、さらに罰則が強化された。
これで撲滅に向かうと思いきや、政治・行政をめぐる不正事案の検挙事件数の推移を見ると、09年以降の「談合・競売入札妨害」は年間10~15件でほぼ横ばい。14年は16件に上った。政官の不正事件全体が減る中で相対的に割合が増加しており、そのほとんどは「官製」だ。
入札不調の負担を避けたい一口に談合と言っても、民間の複数社が共謀して落札する1社を決め、安値受注を避けて最大利益を得ようとするケースは、検挙事案の内容を見る限り減った。
一方で、企業が地方公共団体の職員から予定価格を聞き出して不正に入札する官製談合は、なぜ減らないのか。
昔からある典型は、便宜の見返りに現金などを受け取る収賄だ。
近年は、こうした金銭目的だけではない“新型”が加わった。今回逮捕された千葉市元職員は「入札不調を避けたかった」と供述している。
東日本大震災以降、建築費高騰や公共工事増加による人手不足から起こる入札不調は、全国的な問題となっている。千葉市でも入札不調は14年度が878件中97件、15年度が729件中77件と、いずれも不調率は10%を超えた。
ひとたび不調になれば、設計見直しや再入札手続きなど、現場担当者の負担が大きくなる。不調を回避したい焦りが誘発材料となった可能性がある官製談合は、千葉市以外でも起きているとみられる。
相次ぐ入札不調に、かつて建設業界でよく唱えられた「談合は必要悪」の論を再び持ち出すやからまでいる。だが、新型であれ何であれ、談合の根底にあるのはモラル欠如以外の何物でもない。
(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 大根田康介)