「ユニコーン企業」――企業価値の評価額が10億ドル以上で設立10年以内の非上場企業を、伝説の一角獣になぞらえてそう呼ぶ。該当する企業は、ユニコーンほどに珍しいという意味だ。
米・遠隔医療の新ユニコーン「Ro」とは
Roは2017年に設立されたアメリカの企業で、遠隔医療によるデジタルヘルスクリニックを運営している。当初は、男性ユーザー向け「Roman」、女性ユーザー向け「Rory」、禁煙者向けの「Zero」の三つのデジタルヘルスクリニックを提供していた。オンラインで症状の相談ができ、薬は自宅まで配送される。その後は、無料で継続的なフォローアップを受けられるというものだ。直近の資金調達としては、2020年7月にシリーズCとして2億ドル、2021年3月にシリーズDとして5億ドルを調達している。2022年2月には、さらに1億1,500万ドルを調達し、スキンケア向けのデジタルクリニック「Ro Derm」の起ち上げを発表した。
2月の資金調達の際に、Roの共同創業者でCEOのザッカリア・レイタノ氏が綴ったところによると、Roが事業を開始してから支援してきた患者は150万人を超え、創業から5年足らずのうちに、全米で遠隔医療や在宅ケア、薬局などのサービスを統合した唯一の企業になったとのことだ。
Ro Mind
via ro.coデジタルサービスで、米医療制度の課題を解決する
Roは、「患者中心」であることを強調している。今までの医療制度は、患者側にとって利便性の面でも金銭面でも、使いやすいものではなかったと言う。例えば、診療を受けるためには、仕事を休んだり、子どもの世話を誰かに頼んだりする必要があるなど、手軽さがなかった。こうした現状に対して、Roは遠隔医療などのデジタルサービスで利便性を向上させ、診療から投薬、継続的なケアまでをパーソナライズしたサービスとして消費者へ提供する。そして、それらを無保険でも利用可能にすることで、高品質かつ手頃な価格のヘルスケアサービスの実現を目指している。Roの創業者3名は、創業の理由を「高品質で手頃な価格の医療を受けられないことで、人生を止めて欲しくなかったからだ」としている。
Roの創業者3名
via ro.co相次ぐ企業買収と、今後の狙い
Roは調達した資金を使って自社サービスを成長させるとともに、企業買収も積極的に行っている。2020年12月、ソフトウェアプラットフォームの「Workpath」の買収を発表。患者の家にヘルスケアの専門家を送り、診断テストを行うことを可能にした。これにより、バーチャルでのケアと対面でのケアをシームレスに統合し、さらに多様な医療ニーズに対応できるようになった。また、2021年6月には血圧検査や体重測定ツールなどの家庭用診断テストを提供する「Kit」の買収を発表した。遠隔診療やオンライン薬局に加え、在宅での健康データの収集を促進し、日々の体調管理や予防医療に役立てる狙いだ。Roによる買収後も、WorkpathやKitはサービスを他企業にも提供し続けている。2022年2月の資金調達の際、Roは「Workpathの買収後、他のヘルスケア企業に15万件以上の在宅ケアの予約を促進した」と発表した。さらに、同じ発表文で「今年、Roは2021年に経験したWorkpathとKitの勢いに乗り、あらゆる類のヘルスケア企業が、Roの患者中心のプロダクトやサービスを利用できるよう、BtoB事業を拡大し続ける」と述べられている。このように、Roは患者向けのサービスだけでなく、ヘルスケア企業向けにもサービスを展開することで、医療業界全体のプラットフォーム企業となることを目指しているのだ。