人生に影響を与えたテレビ番組を軸に、出演作品の話題からその人のパーソナルな部分にも迫るインタビュー連載「PERSON~人生を変えたテレビ番組」。今回は、『こういうのがいい』(ABCテレビ、毎週日曜24:55~)で主演を務める西山潤さんが登場します。


原作・双龍氏による同名マンガをドラマ化した本作は、世間一般にうたわれる“恋人関係”の既成概念にとらわれない自由な男女を描いたちょっぴりエッチな大人の日常物語。IT系企業に務める在宅ワーカー・村田元気(西山)は束縛彼女に別れを告げ、晴れて自由の身に。そんな中、趣味のオンラインゲームのオフ会に参加したところ、モラハラ彼氏に愛想を尽かした江口友香(田中美麗)と意気投合。2人は束縛のないフリーダムフレンド(=フリフレ)となっていきます。

この度、地上波連ドラ初主演を務めることとなった西山さんにインタビュー。主演以外にも「初めてだらけだった」という本作の撮影秘話を聞きました。


念願の初主演作は初めて尽くし「せっかくだから楽しもう!」

――最初にオファーを受けた際のお気持ちを聞かせてください。

実は最近、マネージャーさんと「いつかは主演をやりたいですね」という話をしていて、1つの目標だったので、率直にすごく嬉しかったです。

――「エッチな大人の日常物語」ということで、初主演以外にも挑戦が必要な作品になったと思います。

そうなんです。初主演にして、ベッドシーン初挑戦という……(笑)。いろいろ初めてだらけだったのですが、原作を読んで覚悟はできていたので、せっかくだから「楽しもう!」という気持ちで演じました。
また、主演だからこそやりやすい部分もあって。最初からしっかり監督と話し合う時間があったからこそ、安心して臨めました。

――では、そんな原作に初めて触れた際の印象も聞かせてください。

たしかにエッチなシーンに目が行ってしまいますが、それ以上に、日常のゆったり感に惹かれました。日常をゆったり描いているからこそ、その中に入って来るエッチなシーンにアクセントが効いているというか。原作でのコマの使い方も斬新で、少し引いたアングルで、定点観測しているように描かれていて、2人(村田と友香)を覗き見しているような気分になりました。


――原作を読んで、村田元気という役をどう演じようと思いましたか?

村田を演じるには、「何かしてやろう」という気持ちは捨てようと思いました。日常を描く作品、特に本作に必要なのは、“そのまま”でいること。ただ、やはり演じるとなると何かしたくなっちゃうんですよね。今回はいつもより丁寧に役をインプットして、「何かやりたい」という感情を0にすることを重要視しました。

――私も原作を読みましたが、村田は言葉も淡々としていて、あまり感情が掴めないキャラクターだと思いました。西山さんは、こんな村田をどうインプットしたのか気になります。


掴み辛いですよね。僕も最初はそう思いました。ただ、村田はすごく頭が切れる人で、感情が動いても自分の中ですべて完結してしまうタイプだと思ったんです。それを表に出さないからこそ、掴めない感じに繋がっているのではと考え、視聴者の皆さんにもそう伝わるような演技ができたらと思いました。

――物語は村田と友香の会話で展開していきます。それについて難しかった部分はありますか?

この作品において一番大切なのが、会話のテンポ。
あのテンポが作品の雰囲気を作っていて、そこが崩れてしまうと、ただのエッチな作品になってしまうんです。そこは一番意識していたところで、難しかった部分でもあります。

――原作の印象で言っていた、2人を覗き見るような引きのカットもドラマで再現されているんですよね。

通常のドラマの撮影は細かくカット割りされているのですが、この作品は引きで2人のやり取りを撮るからこそ、本当に長回しのシーンが多かったと思います。一番長くて4ページ分、ずっとカメラを回し続けていたので、ミスしてはいけないという緊張感がすごかったです。また、そこも友香との淡々とした会話を繰り広げるシーンだったので、ちょっとアドリブを挟みたい気持ちになりましたが、先ほど言った「何かしたい」という気持ちは捨てて、テンポ感を大事にしながら演じました。


――村田は恋愛に“自由”を求めましたが、西山さんは何を重要視しますか?

距離感ですね。僕は9割が追っかけたい、1割が追われたいタイプ。その割合が少しでも変わってしまったら嫌だなと思います。

――複雑ですね(笑)。相手からの好意が1割だと不安になりませんか?

いや、僕が1時間しゃべり続けて、相槌を打ってくれるだけで良いです。ベタベタしない、そんな距離感で(笑)。

人生でも芝居でも「人から受け取る愛を大事にする」

――ここからは、西山さんとテレビの関わりについて聞かせてください。影響を受けたテレビ番組はありますか?

坂元裕二さん脚本のドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』です。高良健吾さんが好きで見ていたのですが、物語にもハマってしまい、もう繰り返し5回は見ていると思います。僕は「人から受け取る愛を大事にする」ということを人生のテーマにしているのですが、あの作品を見るとよりその思いが強くなります。

もう1つあって、ドラマ『まほろ駅前番外地』。僕のかっこいい男像というのがあの作品に詰まっていて、映像を見ているだけでタバコの匂いが感じられるような、硬派で渋い作品にいつか出演してみたいです。

――では、今よく見ているテレビ番組はありますか?

自分が出演している作品なのですが、それがなくても『VIVANT』は面白いと思って見ていました。たくさんの方に「面白い」と言っていただいた作品に、出演することができて本当に嬉しかったです。

――最後に、西山さんが役者として大切にしている信念や言葉を教えてください。

先ほど人生のテーマとして言った「人から受け取る愛を大事にする」は、芝居をする上でも大事にしています。作品に込められた愛を受け取って、掛け合う相手のお芝居からも愛を感じ取り、その愛を返す。それを視聴者の皆さんにも感じてもらえるように、これからも丁寧に愛を持って芝居していきたいです。

取材・文・撮影:米田果織
スタイリスト/李靖華  ヘアメイク/長野一浩〔MARVEE〕