人生に影響を与えたテレビ番組を軸に、出演作品の話題からその人のパーソナルな部分にも迫るインタビュー連載「PERSON~人生を変えたテレビ番組」。今回は、現在放送中の金曜ドラマDEEP『消せない「私」ー復讐の連鎖ー』(日本テレビほか、毎週金曜24:30~)に出演している本郷奏多さんが登場します。


黒田しのぶさんの「消せない『私』~炎上しつづけるデジタルタトゥー」(ぶんか社)をドラマ化した本作。弱者が元いじめっ子たちへの恨みを晴らす勧善懲悪ストーリーを描いていますが、単なる復讐ものでは終わらない“濃密な”リベンジ・エンターテインメントです。志田彩良さんが、卑劣な同級生たちの悪意の連鎖でどん底まで叩き落とされる主人公・灰原硝子役。本郷さんは、硝子の運命に大きな影響を与える徳道仁を演じています。

この度、本郷さんにインタビューを実施。硝子の復讐に協力はするが、本意ではないという複雑な表現についての苦悩。
また「一番好き」だというテレビ番組も聞きました。

「協力するけど良いとは思っていない」微妙なニュアンスの表現に苦戦

――「デジタルタトゥー」「誹謗中傷」など、今まさに現実でも問題視されているテーマを扱う本作。最初に作品に触れた際の印象は?

「復讐」をテーマにした作品で、ここまでとことん復讐に振り切った作品は新しいですし、とても攻めた内容だなと思いました。

――硝子の復讐を「正しくない」と思いながらも、彼女の思いに寄り添い復讐に協力する徳道。葛藤する役どころでもありますが、演じる上での苦労は?

協力する立場ではありますが、徳道は硝子が復讐を生きがいに感じているころを良いとは思っていません。できることならやめてほしいと思っているので、「本意ではないけど協力する」という微妙なニュアンスが難しいなと思っています。
かなり過激な復讐方法を取るので、もしかすると視聴者が硝子に引いてしまう部分もあるかもしれません。そんな時に徳道という存在があることで、硝子を置いてけぼりにならないようにしたい。見ている人には硝子を好きでいてほしいので、それを助けるのが、この作品における徳道の存在意義だと考えています。

――その微妙なニュアンスは、どのように表現しているのでしょうか。

徳道は、10年前の自分の行いのせいで硝子の人生を狂わせたと責任を感じています。その負い目をベースに置いて演じているので、おそらく自然と表情に出ているのではないでしょうか。
また、硝子に対してある種「保護者」「父性」を含ませた目線を持つこと。いつも「この子は家族を含め全てを失ってしまった、守ってあげなければいけない存在」と思いながら演じています。

――そんな硝子役・志田彩良さんの印象、お芝居で掛け合ってみていかがですか?

まず初めに本読みをした時に、「ステキなお芝居をする方だな」と思って。迫力があるんです。硝子というキャラクターを掴むことはとても難しく、演技力が求められる役柄だと思っていたのですが、それを、説得力を持って演じているのが素晴らしいと思いました。

――おふたりで何か話したことはありますか?

まだ撮影に入って3~4日ほどなので(※取材時)、特にお話したことはありません。
ただ、志田さんはとても明るくて、重いテーマを持つ作品は現場の雰囲気がピリピリしてしまうことが多いのですが、いつもニコニコしていて男性スタッフをメロメロにしています(笑)。現場の雰囲気をとても良いものにしてくれて、ありがたいですね。

――ドラマの放送を楽しんでいる方に今後の展開の見どころをお願いします。

徳道が硝子と再会し、復讐に手を貸すことになるのですが、やはり復讐は負の連鎖を生むんですよね。徳道が手を貸したことで、彼の大切にしてきたものにも影響が出てきたり……。それにより、物語がさらに展開・加速していくので、今後、そこが見どころになってくると思います。


バラエティ好きな一面「かなり詳しいと自負」

――ここからは、本郷さんとテレビの関わりについて聞かせてください。これまで見てきたテレビ番組で、自身に影響を与えた・一番好きな番組などはありますか?

僕は昔からバラエティ番組が大好きで、かなり詳しいと自負しています。番組を言われたらディレクターさんの名前を言えるくらい(笑)。そんなバラエティ好きの僕が一番好きな番組が、TBSで放送されていた『万年B組ヒムケン先生』。一般人に密着し向き合っていくという内容だったのですが、おそらく登場人物たちが怖すぎて、DVD化や配信などがされていないんですよ。ぜひTVerさんのお力で、なんとか配信してくれませんかね? めちゃくちゃ面白いので……!

――幅広い役を演じ分け、確かな演技力で視聴者を魅了する本郷さん。
役者として大事にしている信念、軸、言葉などがあれば教えてください。

一つひとつの仕事に真剣に向き合うことですね。僕は、この仕事のために「努力している」と自信を持って言えます。この仕事は、能力がなければ次のオファーがもらえない厳しい世界なので。だから、常に気を抜かない。どんな仕事も、自分の求められるものを見極めて提供していかないと飽きられてしまうので、しっかり事前調査をして準備した上で作品に挑んでいます。

――YouTubeチャンネルでは、素の本郷さんの姿を見せてくれるのが印象的です。俳優業と違い、YouTubeの活動で意識していることは?

俳優は役になりきった姿を見せているので、YouTubeは本郷奏多のそのままを見せています。僕も意識的に、自然体の姿を見せていますし、そこが大きな違いかと思います。役者の仕事も楽しいのですが、YouTubeは自分のやりたいこと、好きなことを自由にできるので、違った意味で楽しいですね。

取材・文・写真:米田果織
<ヘアメイク>Hair and make up 朝岡美妃(Nestation)
<スタイリスト>川地大介
*衣装協力
ジャンピエール/アドナスト(03-5456-5821)