人生に影響を与えたテレビ番組を軸に、出演作品の話題からその人のパーソナルな部分にも迫るインタビュー連載「PERSON~人生を変えたテレビ番組」。今回は、3月27日よりテレ玉でレギュラー放送スタートした『天竺鼠の川原の』(毎週水曜23:00~※民放公式テレビ配信サービス「TVer」でも見逃し配信予定)に出演する川原克己さん(天竺鼠)が登場します。


2004年に瀬下豊さんとお笑いコンビを結成。その独創的なネタで『第35回 ABCお笑いグランプリ』優勝、『キングオブコント』も3度ファイナリストになるなど、賞レースでも結果を残し、業界内でも多くのファンがいます。

近年では、絵本作家、映画監督、俳優と多方面で活躍する川原さんの冠番組が『天竺鼠の川原の』です。川原さんが埼玉の街などをロケする番組ですが、一体どんな内容になるのでしょうか? お話を聞きました。

ゲストに呼ぶならあの先輩芸人!?

――『天竺鼠の川原の』レギュラー放送決定について思いを聞かせてください。

今までにない番組になっていますね。
これまでロケ番組をやっても、絶対に隣やスタジオにツッコミがいたのに、この番組は本当に誰もいない。“ようオッケーしたな”と思いますし、ツッコミがいない中でロケをやったのは初めてだったので楽しかったです。

……「ツッコミ」ってかっこよく言っていますけど、「注意する人たち」ですね。頑張って楽しくボケているのに、「もうやめとけ!」とか「それさっき聞いたやつや!」とか、ずっと注意されるので、やっぱり萎縮はしますよね。

――(笑)。

こっちは楽しませたい気持ちがあるのにも関わらず、「やめとけ」「こいつアカン」と言われ続けてきた芸歴20年ですから。
そうやって萎縮している中、この番組のオファーが来たので本当に助かったというか。やっと、のびのびできるなという感じです。

これまでも、ありがたいことに「ファンです。川原さんで企画をやりたいです」とたくさん言っていただいたんですが、絶対に上から「やめとけ。やるんだったら、ちゃんとした人たちをスタジオに固めろ」と返されるらしくて。これをよく通してくれたなと思います。


――埼玉県のテレビ局からオファーが来たときは、どんなことを思いましたか?

すごく“攻めてるな”と思いました。全国の人に埼玉の良さをアピールするのは絶対に僕じゃないと思うんですよ。正直、僕が言うのもあれですけど、“埼玉の人は頭がおかしいのかな?”と思いました(笑)。(同局で放送中の)『いろはに千鳥』で、すでに話題になっていますけど、これから埼玉はもっとすごいことになるんじゃないかなと思いますね。

――今後、ゲストに呼んでみたい芸人さんはいらっしゃいますか?

思いきって、千鳥(大悟、ノブ)さんを呼んでもいいのかなと思います。内容は『いろはに千鳥』と一緒で、千鳥さんに頑張ってもらう。
そこで8本撮りくらいできたらすごく楽だろうなと思います。

――(笑)。

でも今のところは、ゲストなしで1人でやる感じですね。やっぱりノブさんとか来ちゃうと、「クセがどうのこうの」と注意をされますから。注意されると萎縮しちゃうんで、呼ぶとしたら、注意しない方というか……。たとえば、埼玉にはスポーツチームがありますよね。


――浦和レッズや埼玉西武ライオンズなどたくさんあります。

「浦和レッズのみなさん」とやってみたいです。昔から、何かあればボケで「浦和レッズのみなさん」と使っていたので、“ここで繋がるんや”と。響きだけで使っていたので、何か縁を感じますね。「これは何を見せられているんだ」を感じてもらうために、浦和レッズのみなさんを引き連れて、僕がどこにいるか分からない……とかあったり、そんな違和感があってもいいのかなと思います。

今までもそうですけど、違和感が一番楽しいんですよ。
この番組は違和感に挑戦できる番組やし、そもそも僕が埼玉の街を歩いていること自体が違和感。この番組を最後まで見ていただいたら分かるんですけど「なんでこんなことになっているんだ」という違和感も入れています。

――すでにロケに行ったそうですね。いかがでしたか?

やっぱり人が面白かったですね。伝統あるものを作っている方とか、日本の良さを守っているところに行って触れ合ったんですけど、一回行ってみて興味が湧いたので、これからもいろいろな人と出会っていきたいです。

ストレスなくテレビに出たい

――ここからは、川原さんとテレビとの関わりを教えていただきたいです。学生時代、よく見ていたテレビ番組を教えてください。

お笑いでいうと『ダウンタウンのごっつええ感じ』ですかね。家が裕福ではなかったので、狭い家にテレビ1台で、なかなかテレビを見られる時間がなかったんですよ。

――川原さんはお笑いの世界に誘われて入っているので、憧れというよりも、いち視聴者として番組を楽しんでいらっしゃったんですか?

そうですね。そもそも弟がお笑いとプロレスが好きで、家族でメシを食っているとき、弟にその番組を見させられるんですよ。夕食のときだけは、テレビを見てもいい貴重な時間だったのに、そこで弟が「ちょっとこれ見ていい?」と録画したプロレスと『ごっつ』を交互に見せてきて。「今のは面白い技だ」とか言うんですけど、何が面白いのかが分からなかったです。

――(笑)。芸人活動をする中で、大切にしている信念があれば教えてください。

初めてテレビに出させてもらったときから、すごく生意気なことばかり言っていて、“僕じゃなくてもいいだろうな”と思うものは全部断ってきたんですよ。というのも、やっぱり上手にできないし、行ったら喧嘩しちゃうんですよね。「もっとこうしてください」と言われても「いや、それ面白くないのでやりません」と返しちゃう。嫌な感じにさせちゃうので、お断りさせていただいていますね。

そのあたりは、同期の濱家隆一(かまいたち)からよく怒られていて「そこは頑張って『はい。やります』でええねん」と言われるんですけど「絶対イヤや」と。「テレビに出ない」とかではなくて、好きなテレビに出て、ストレスなくやるのがベストだから“そこは崩せないな”というのは昔からあります。

――川原さんの番組を拝見していると、確かにすごく楽しんでいらっしゃる印象があります。

でも、“ちょっと歯を食いしばってもいいかな”と思えるものもあって。それが、野球と動物なんですよ。

――え!

猫を飼っているんですが、猫の番組に行ったとき「ここはボケないでほしい」と言われたら、歯を食いしばれるんです。

――それはできるんですね(笑)。

できます。それでもボケちゃうんですけどね。この前も、元プロ野球選手のレジェンドたちと芸人チームでガチで野球をする番組に出させてもらったんですが、1打席目だけボケたくなっちゃって。僕が、ピッチャーの方の近くまで行ってバットを構えたら、普通に審判に「ダメよ、それ。アウトでいいの?」と言われて。「嫌です」と真面目にやりました。

――(笑)。

野球と動物以外のバラエティは興味があるもの、好きなものしかやらないです。濱家とか大悟さんから「テレビでいっぱい川原を見たい」「テレビにいっぱい出るために、ちょっと歯を食いしばるときがあってもいいんじゃないか」と言われるんですが、歯を食いしばらないといけないなら、その日は家でゆっくりしていた方がいいし、自分の体と脳みそのためになるのかな、と思っています。

取材・文・写真:浜瀬将樹