軽い交通違反…出頭拒否を続けると逮捕される?【交通違反の基礎知識・その3】
青切符(反則切符)を切られ、反則金を払わず、いわゆる交通裁判所へちゃんと出頭し、反則金の特例納付を拒むという、言ってみればめんどくさいことをなぜするのか。
それでだ、もとが青切符で不服がある人は、その先どうなるか。大きく3つに分かれる。
1、警察から呼び出される
取り締まりをおこなった署や隊から呼び出しがくる、ことがある。出頭すると、さらに調書を作成されたり、実況見分の立会いを求められたり。この出頭も任意だが、交通裁判所の場合と同様、拒み続けると逮捕されることがある。ただ、私の知る限り、この呼び出しはあまりないようだ。
2、検察から呼び出される
検察庁からいきなり呼び出しがくる、ことがある。検察官(多くの場合、区検察庁の副検事または検察事務官)は、運転者の話を聞いて調書を作成し、こんなふうに言うことがある。これは交通裁判所の警察官が言うこともある。
「あとは裁判ということになります。
起訴は2種類ある。1つは正式な起訴。「公判請求」という。検察官が公判請求をすれば、テレビで見るような普通の裁判になる。
もう1つは略式の起訴だ。「略式起訴」とも「略式命令請求」ともいう。略式は検察官だけでは決められない。運転者の同意が必要だ。具体的には「正式な裁判を受けられることもよくわかりましたが、略式手続きによって審理されることに異議がありません」旨の記載がある文書に運転者が署名押印して同意する。
「突っぱねてればウヤムヤになって終わるかと思った」という程度の人は、略式に同意してしまうだろう。そうすると、待合室でしばし待ち、呼ばれて窓口へ行き、罰金を払って帰ることになる。略式は「とっとと罰金を払って終わりたい」という人のための、特別な手続きなのだ。罰金の額については【交通違反の基礎知識・その3】で述べた。なお、罰金は後日の支払いもできる。
もとが青切符で争いがある人は、略式に応じない。すると検察官は、怖い顔でこんなふうに言うことがある。
「正式裁判を望むんだな。よしわかった。あんたと次に会うのは裁判所だ」
3、どこからも呼び出しがない
いわゆる交通裁判所へ出頭したあと、どこからも呼び出しがなく、ないまま何年も過ぎ去ってしまうことがある。それはねえ、検察官が「不起訴」にしたのだ。
検察官は、起訴をする権限がある(刑事訴訟法第247条)。
「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」
この第248条による不起訴を「起訴猶予」という。「違反が事実ならアウト」と多くの方は思い込んでるようだが、違反は事実でも、いろいろ勘案して不起訴とすることがあるのだ。
不起訴にしたことを検察官は本人に伝える義務がない。お役人は義務がないことをしない。なので本人は知らず、どこからも呼び出しがないまま何年も過ぎ去る、ということが起こるんだね。
■交通違反の不起訴率は約93%が起訴猶予
ここで法務省の「検察統計」を見てみよう。以下は2022年の道路交通法違反についてのデータだ。
略式起訴 8万8446人
公判請求 6275人
不起訴 9万4011人
(うち起訴猶予)8万7676人
不起訴のうち約93%が、第248条による起訴猶予、つまり「違反は事実だが…」という不起訴だ。「違反が事実ならアウト」と言うのは、まったく無知な人、でなければ、取り締まりに納得いかないのに屈服して反則金を払った自分に対する悔しさ、後ろめたさ、そういうものが胸の内にある人、かもしれない。
起訴(略式起訴+公判請求)と不起訴と、ほぼ同数だ。起訴か不起訴か、半々? いや、取り締まりに不服がある人は、略式に応じないはず。公判請求か不起訴か、どっちかになる。双方の人数を比べると、不起訴率は約94%。けっこう高い。
そうして、もとが青切符だった人の不起訴率は、じつは100%に近い。そのこと、最新のデータをもとに【交通違反の基礎知識・その5】で解説しよう。
文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。