ボール紙の台紙にテープで花火がくっつけられてる、手持ち花火のセット。うまくテープをはがせなかったり、花火をはがすとき花火の表面も一緒にはがれたり、はがしたつもりがもう1か所テープでくっついてたり……なんてこともしばしば。


どうしてボール紙とテープなんだろうか。束ねて袋に入れただけじゃダメ?
日本煙火協会に聞くと、こんな答えが返ってきた。
「もともと台紙を入れた理由は存じ上げませんが、ボール紙を台紙にすることで、花火が破損しないよう保護できるんです。袋に入れただけでは、花火が折れてしまったり、裂けてしまう危険があるので、安全性を高めるうえで台紙は重要な役割を持っています」

ただ、もとの理由は製造会社じゃないと分からないという。そこで、ネットで調べてみると、日本で初めて袋入りのセット花火を販売したという会社を発見。そのセット花火『チャイルドセット』を販売する、愛知県の株式会社稲垣屋に話を伺った。

「確かに、昭和32年に当社が販売した『チャイルドセット』が、業界で最初に売り出された台紙のセット花火かと思われます。そしてもとを辿ると、当社が昭和10(1935)年に販売を始めた、セロファン包装のセット花火がルーツになります」

昭和10年当時、手持ち花火は露店や駄菓子屋の店頭で売られていた。しかし単価が安いうえ、販売や管理が面倒なバラ売り花火は、大型店舗には不向きな商品。そこで(株)稲垣屋は、百貨店でも販売できるよう、ボール紙製の化粧箱入りセット花火を売り出した。深さ1cm程度の箱で、表面は中身の花火が良く見えるようセロファンで包装したものだった。

そして昭和32(1957)年、化粧箱入りの花火を改良して販売されたのが、袋に入れて、ボール紙とテープで花火を固定した『チャイルドセット』。
楽しげな絵が描かれたパッケージは子供の心もつかみ、セット販売は手持ち花火の主流になっていった。

そうして今も、スーパーやコンビニなどあらゆる場所で、花火が買えるようになっているってわけだ。

ちなみに、テープのはがしにくさに、花火業界も手をこまねいてるわけじゃない。日本煙火協会によると、
「最近ははがすときに花火が傷まないよう、紙の帯でカバーしたり、透明な袋に入れた上からテープを貼るなど、工夫するようメーカーに指導しています。なので、以前よりも扱いやすくなっていると思いますよ」
とのこと。使う側の不満を解消する努力も、しっかりと行われてるようだ。


意味あって作られていた、セット花火のパッケージ。
化粧箱時代からの長い歴史を感じると、テープを取る煩雑さも、なんだか軽くなった気がしました。
(イチカワ)

日本煙火協会HP
(株)稲垣屋HP