東京・台東区にも、郷土かるたがあった。
今年の3月に、「台東区発足六十周年記念」として出された『台東区郷土かるた』というのがそれ。
台東区といえば、上野・浅草といった、都内でも有数の歴史と伝統ある町を有している。そのため、かるたになりやすい項目が多そうな気はするが、どんな札があるか、中身をみてみると……。
「あ/朝六時 鐘は上野か 浅草か」
早速、上野&浅草のダブル名所が盛り込まれた札から始まり、下谷の三島神社に伝わるという、雷の子を井戸に閉じ込めてこらしめたという民話がもとになっているという、
「い/井戸に落ち 閉じ込められた 雷さん」
現在上野公園にある、日本最古の木造洋式音楽ホール「奏楽堂」のことが書かれた、
「う/歌声と 歴史の響く 奏楽堂」
「え/江戸しぐさ 今も昔も この町に」
と続き、
「ん/雷門 風神雷神 大提灯」
まで、酉の市や象列車など、台東区の名所や伝承などがよみこまれている。花やしきや浅草サンバカーニバル、循環バスの「めぐりん」のことなども盛り込まれていて、けっこうベリエーションはゆたか。オレ的に気にいったのが、
「わ/ワイワイと サンバのリズムで イェイイェイイェイ」
の、「イェイ」が3つ重なってるところ。大きい声でこの札が読まれているところを考えると、楽しい気持ちになれる。あとは、
「け/源内も 見上げるアンテナ 大きいな」
という、平賀源内の墓の近くに電波塔があるという内容のもの。エレキテルもビックリだ。
味わい深いこのかるたの編集にたずさわった、台東区教育委員会生涯学習課に聞いてみたところ、
「民話と伝承遊び普及委員会という会で、いろんな遊びを通して区のことをまなんでいくなかで、各地の『郷土かるた』もありますので、それを選択しました」
とのこと。
札の内容については区民の公募によるもので、選定基準は、「子供たちを対象にしたもの」「語呂のよいもの」、そして当然、「台東区に限る」というあたりに気を使ったという。
「中には、諸説あるものもありますので、事実などが『確かなもの』ということも考慮しています」
それにしても、絵札に描かれた絵がまた、なんとも味わい深いものなのだが、これは、東京芸大の大学院生の手によるものだとか。芸大も上野にあるので、絵も「ご当地」で調達ということになる。
かるたで遊んでるうちに、台東区のこと、けっこうマニアックなことまで詳しくなれました。「イェイイェイイェイ」
(太田サトル)