芸能人を見た人が、よくこんなことを言う。
「実物はテレビで見るよりずっと細くて、すんごく顔がちっちゃくて、腰なんてこ~んなんだよ!(両手でマルをつくって)」

これ、雑誌編集者やヘアメイクさんなどでも、同じようなことを言うのだが、よく聞く「テレビは太って見える」は実際にあるのだろうか。
あるとしたら、なぜなのか。

テレビ関係者などに聞くと、「縦横の比率の関係で、ブラウン管は横に引き伸ばされるから」とか「デジタルは細く見える」なんて言う人もいて、「単なる錯覚」という意見もある。
そこで、あるヘアメイクさんに聞いてみたところ、
「ライティングのせいじゃないでしょうか。きれいに見せるために、かなり強くライトをあてるから、膨張して見えるのでは?」とのこと。

さらに、あるカメラマンさんは言う。
「太って見える理由はいろいろ言われてるけど、本当の理由ははっきりわかりません。
ただ、個人的には、やはり太って(顔が大きく、ぽっちゃりに、頬が張ってるなど)見えると思いますよ。グラビアの人などは、TVで見るより小顔ですごくグラマーでしたし、逆に、TVで見るとすごく細いあるタレントさんは、実際にも変わらずすごく痩せてるままなんですが、雑誌で見るとすごくキレイに写ってます」
彼自身の経験から出てきたのは、こんな推論だという。
「画面の比率、眼と脳の関係、画面の走査線の関係、照明の関係、ライト焼け防止のドウラン、メイクの関係など、理由はあるんだと思いますが、前述の理由も含め、複合的に思うのは、TVの場合、『TV的にちゃんと無難にキレイに映ってれば良い』ということ。CMや映画は別として、映ってる特定の個人がちょっと太って見えようが、関係ないんだと思います」
たとえば、出演者が少ない場合、少しは意識するかもしれないが、大勢の場合は個人が太って見えるかどうかなどどうでも良いのでは? ということだった。
「テレビは写真と違って、一度に大勢の人が映るし、人の動きも立ち位置関係なく動くし、いろんな角度でカメラがあるから、満遍なく照明を当てなければならない。と言うことは、かなり立体感がないくらい光が当たっているのでは? 立体感がないと、かなり平面的に映ってるはず」

確かに、テレビを見るとき、画面で影なんか見ることはほとんどないし、わざわざ影をつける必要もないわけだ。
となると……。
「太って見えてしまう基本的な条件が出来ますよね。その上、メイク、衣装、カメラ(技術的な問題やカメラのアングル等)、TVの走査線の問題などが絡んで、太って見えるんだと思います」

余談だが、かつてリーブ21のコンテスト会場で見た和田アキ子は、テレビで見ている印象よりずいぶん小柄で驚いた。決して、「工場で修理され」たり、「玄関にある靴が、ボートくらいの大きさがあったりする」ようには見えなかったが、これもやっぱりテレビ効果でしょうか。
(田幸和歌子)