カメラ映像機器工業会調べの2007年のカメラ出荷実績は約1億台、うち日本向けは約1000万台と全体の10%くらい。一方、欧州・北米向けはそれぞれ3200万台強、計6500万台となっており、大きなボリュームを占めている。当然、カメラメーカーは欧米向けの製品づくりを強く意識せざるを得ない。すると、欧米人と日本人との好みの違いに気づくのだという。
「当社のコンパクトデジタルカメラ『DP1』はおかげさまで日本ではよく売れましたが、欧米ではいまひとつ。その理由を『小さいから』と販売関係者からいわれました」とカメラ・レンズメーカーの株式会社シグマは説明する。
コンパクトで高画質な写真が撮れるので日本で売れたが、欧米ではそのコンパクトさがあだとなったのだ。一眼レフ用の交換レンズにも同様な現象が起こっている。
「ほぼ同一性能で軽量・コンパクト化したモデルよりも、従来の大きくて重いレンズの方が欲しいといわれ、びっくりしました」と同社。どういうことなのか。
「手の大きさが欧米人は日本人より大きいので、大きなカメラやレンズが好まれるのだと思います」とニコン。確かに、カメラは自分の手のサイズに合うものが撮りやすいのは事実。
だが、そのような手の大きさの違いからくる志向だけではないようだ。
「クライアントが見ている前で、小さなカメラで撮影するわけにはいかない」とカメラメーカーは欧米のプロカメラマンからよく聞くのだいう。
アマチュアでもカメラの1台くらいは持っているもの。一般的に普及したサイズのカメラと同じものを使うと「それでもプロか、大丈夫なのか」と思われるのを恐れているわけだ。大きいカメラは性能がよく、いい写真が撮れるという信仰が、クライアントや撮られる側に根強くある。
というわけで、「性能は最新モデルよりも多少劣っても大きいカメラがいい」というちょっと変わった志向は、永久に不滅なのかも。
(羽石竜示)