お正月、久しぶりに会った面々の中に、実業団チームでサッカー選手をしているという友人がいた。実業団サッカーチームとは、言うなれば企業が持っている「部活」のようなもので、きちんとしたリーグ戦などもある。


実は前々から気になっていたのだが、実業団チームに所属している選手って、仕事と競技のバランスをどうやってとっているのだろう? 勝手なイメージを語らせてもらうと、名目上は社員、でも皆が仕事をしている時間は練習しているというイメージ。「俺たちは仕事しているのに、あいつらはサッカーかよ」なぁんて、白い目で見られているんじゃ……。ドキドキ。
企業や競技によって事情はもちろん異なると思うが、友人が所属しているサッカーチームではどうしているのかを聞いてみた。

「僕が所属しているチームは全員正社員。だから、仕事をしなくていいなんてことはないよ。しっかり月~金で働いている」と、友人。
ちゃんと働いているんですね。失礼しました。では、日々の練習はどうしているのだろう? 

「僕の所では、火、水、金が練習。土日は試合といった感じかな」
通常業務をこなしつつ、仕事終わりに練習か……。まるで、受験と部活を両立させている学生だな、遊ぶ暇なんて無さそうだ。


「まあ、もともとサッカーが好きだし、遊べないことに不満はないよ」とのこと。

さて、この「仕事が本業」の実業団サッカーチーム、昨今の経済悪化などにより、風当たりはかなり厳しいようだ。

「ちょっと前まではサッカー社員といって、サッカーがうまい社員を採用していたんだけど、今はもうサッカー社員は採らなくなったみたいだね」と友人。
サッカー社員を採用しなくなったことで、サッカー部の人数も減ってしまっているのだとか。なんと、社外の人間にも門戸を開き、人数集めに奔走しているらしい。
“Jリーグを目指す”という明確な目標があるチームならいざ知らず、我が友人が所属しているような「仕事が本業」の実業団チームでは、部活はあくまでも余技と考えられているのかもしれない。企業の業績いかんで縮小されてしまうのは避けられないのかも……。
「やっている選手は、趣味なんかじゃなく、上を目指してやってる人がほとんどなんだけどねぇ……」と寂しそうに語った友人。

競技種目や企業によっても違うと思うが、実業団チームは、母体となる企業の宣伝や、社員の士気を高めるといったことを目的として存在していることが多い。会社の業績が悪いのに、「宣伝などのためだけに、スポーツチームを運営していく余裕はない」ってのは、なんとなくわかる気もするが、このままだと、実業団チームは衰退の一途を辿ってしまうような……。
我が友人が所属しているチームと同じように、「仕事が本業」のサッカーチームで、アマチュア最強との呼び声も高い本田技研工業株式会社フットボールクラブ(以下Honda FC)にもお話を伺った。

「確かに、実業団チームにとって今は厳しい時期ですね。
ただ、私たちの場合、チームが地域貢献をするという役割も担っているんです」とHonda FCの担当者。
つまり企業の宣伝や、社員の士気を上げるっていう目的以外にも、チームが存在する理由があると。

「私共の選手育成システムは、Jリーグのチームに勝るとも劣らないという自負があります。そこで有能な若い選手を育てるというのも、立派な活動のひとつです。それによって、本拠地の浜松にサッカーが根付き、地域の活性化につながると信じています。今年で38回目を迎えるサッカー大会も開催していますしね」とのこと。
確かに子供の人材育成は、「サッカーが根付く」という地域貢献だけではなく、日本サッカー全体にとっても意義があることのようにも思う。若い世代の成長なくして、日本サッカーのレベルアップはあり得ないわけだから。

「正直、苦しいことも多いですが、がんばります」と、力強く語ってくれたHonda FCの担当者。なかなか厳しい世の中ではありますが、是非ともがんばって頂きたい! チームも選手も!
(ドープたつま/studio woofoo)
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