ビッグコミックスピリッツ連載中の『上京アフロ田中』で、先日、ちょっと気になる話があった。

主人公・田中が合コンに出かけたときのこと。
相手の女の子がキャバ嬢ではないかという読みがあり、その根拠として挙げられたのは、こんな内容だった。
「飲食店などで店員を呼ぶとき、フツウの人は『すいません~』と呼ぶ。でも、キャバ嬢は、仕事で黒服を呼ぶときのクセで『お願いします~』と呼ぶ」
もちろんギャグマンガのネタだし、統計などあるわけもないので、真に受けるのはナンセンスだが、それにしてもちょっと面白い考察だ。

その一方で、以前、食事のマナー本の著者に、こんな注意をされたことがあるのを思い出す。
「お客さんがお店の人を呼ぶとき、『すみません』と言うのはおかしいですよ。必要以上にいばることもないけど、へりくだるのもおかしい。『お願いします』のほうが良いです」
また、別のマナーの先生も、「『すみません』は謝られているみたいで、逆に良い印象がない。『お願いします』のほうが感じが良いですよ」と言っていた。

そんなわけで、自分自身は、以来、できるだけ「お願いします」を使ってみたり、「でも、『すみません』のほうがフツウだよな?」と思ったり、「すみません、お願いします」とくどい言い回しになったりと、いまだに迷っている。
お店の人としてはどう感じるもの?

都内のカフェ店員さんに聞いてみると……。
「『すみません』って言う人のほうが多いですよ。私も言ってると思うし、別に『お願いします』のほうが丁寧な感じもしないです。
どらちの言い方が良いかというよりも、お客さんの言い方(強弱とか)や顔の表情の違いのほうが、印象を左右しているかも。それと、『ありがとう』『ごちそうさま』『美味しかった』とか言ってくれるのが、嬉しいですね」

また、ある博物館のスタッフは言う。
「『お願いします』のほうがわかりやすいかもしれないけど、日本人は、とかくいろんな場面で『すみません』を使いますよね。謝るときだけでなく、呼ぶときも、ありがとうの代わりでも。それと、あえて『お願いします』と言うのは、気のせいか年輩の方が多いような……」

さらに、六本木のカラオケバーの経営者はこんな話をしてくれた。
「確かに、知り合いのキャバ嬢やクラブ嬢は、みんな自分がお客として行ったお店でも、『お願いしま~す』と言う人が大多数だと思いますよ。自分の店のボーイやスタッフを呼ぶときもやっぱり『お願いします』です」

!! じゃ、やっぱり「お願いします」は特殊なんですか?
「いえ。うちのお店のお客様は『お願いしま~す』が多いですよ。ただ、私個人的には『すみません』を使ってますね。ちょっとしたご飯屋さんやファミレスなんかでも。『お願いします』はたぶん身内に使うのが多いのではないでしょうか」

なるほど。確かに、自分も「すみません」と言うのはよく知らない店で、顔見知りのお店に行くときのほうが「お願いします」を使うかも?

もちろんどちらが正しいというわけでもないだろうし、受け取る印象は人それぞれ。


「すみません」と「お願いします」、あなたはどちらを使いますか? 
(田幸和歌子)
編集部おすすめ