まもなく花粉シーズン到来。鼻がムズムズしてくる憂鬱な季節になる。


ところで、鼻毛を抜いて「イタタタ」と涙が出たなんてこと、誰でも経験したことがあるはず。
ここで素朴な疑問。なぜ鼻毛を抜くと、必ず涙が出てしまうものなのか。

『10秒間まばたきせずにいられますか』(日本評論社)の著者で、慶應義塾大学教授の坪田一男先生に聞いた。
「鼻毛を抜くと涙が出る理由は、まず単純に痛いから。鼻毛だけでなく、たとえば、頭や足のすねなどをぶつけてもやっぱり涙が出ますよね?」

「今後、痛みを表す単位を1ハナゲとする」なんて都市伝説系の話があったけど、鼻毛を抜くのは確かに痛い。
痛みが他の部分より強いから、涙が出るだけということなのかというと……。
「鼻や目の周辺の知覚は、眼神経という三叉神経の一部につながっていて、それは涙腺の神経にも通じています。ですから、鼻からの刺激で涙腺に刺激が伝わり、涙が出ます。鼻を麻酔してしまうと、涙の量が減ることもあります」
ちなみに、ドライアイの検査で、刺激による反射性の涙が出るかどうかのテストは、鼻の中を綿棒でさわって検査するのだとか。

では、刺激することでなぜ涙が出るのだろうか。
「もともと涙は目の表面を保護するためにあるのですが、目の中にゴミが入ると、三叉神経に『異物が侵入したぞ』と信号が伝わり、すると涙腺が急いで涙をたくさんつくって、ゴミを洗い流そうというしくみになっています。
涙は鼻と喉に流れていきますから、涙で鼻の中も洗い流そうとしているのかもしれません」

ところで、三叉神経には、鼻毛だけでなく、睫毛も眉毛も含まれるそうで、たとえば、睫毛の刺激でも、涙が出てくるものなのだとか。

鼻毛を抜くと涙が出るのは、「異物」と感じた刺激を排除するため。立派な防衛本能なのだった……。
(田幸和歌子)