膀胱(ぼうこう)パンパンで、限界ギリギリのとき。

いつも悩んでしまうのは、「一刻も早くトイレに駆け込むために、ダッシュするか」、それとも「少しでも揺らさないように、そーっと静かに歩くか」ということだ。


たとえば、膀胱を満タンのバケツと考えたら? ダッシュして短時間で運ぶのと、静かに運ぶのとを比較したら、おそらく静かに長時間かけて運ぶほうがこぼれないだろう。
でも、問題は、一定量に満タンのバケツではなく、すでに限界ギリギリで、さらに、今後も危機が迫ってくる可能性のある「膀胱」だということ。

『はい、泌尿器科です。』の著者で、医療法人社団湘南太陽会 鳥居泌尿器科・内科院長の鳥居伸一郎先生に聞いてみると……。
「本当に容量がいっぱいだったり、限界にある場合は、一刻も早くトイレに駆け込むよりも、刺激しないでゆっくり歩くほうが良いと思います。ただし、これは、『括約筋(かつやくきん)がゆるむタイプ』の人の場合ですよ」

括約筋がゆるむタイプとは、自分の意思とは無関係に、時と場所を選ばず、尿が漏れてしまう状態のこと。
たとえば、最も多いのは、くしゃみや咳、笑ったときなど、急にお腹に力がかかったときに尿が漏れる「腹圧性尿失禁(ふくあつせいにょうしっきん)」だという。
これは、走ることが、そのまま刺激となり、限界を超えて「失禁」につながってしまうから、危険だということだ。

では、その一方で、「ダッシュしたほうが良い人」というのもいるもの?
「膀胱が頭の中で『いっぱい』と判断し、少しでも溜まると、出てしまう働きがある人などがそうですね」
膀胱はもともと成人の場合で最大700~800mlくらいと、かなりのオシッコを溜められるようにできているそうだが、ちょっとした刺激でも頭にいくと、ガマンできなくなってしまう人もいるという。
「たとえば、子どもの場合、刺激がいったん頭にいくと、散らすのが難しい部分もあるので、ゆっくり静かに歩いていくよりも、ダッシュしたほうが良い場合があります」

ちなみに、少しでも溜まると行きたくなる子どもには、「トイレにすぐに行きたくならないトレーニング」を行う専門医もいるそうだ。

大人の場合でも、限界でうまく気を散らせるのなら、静かにゆっくり。オシッコのことで頭がパニックになってしまうなら、ダッシュすべし。

(田幸和歌子)