2009年2月28日、日本のバンド「NICOTINE」(ニコチン)が、ソウル市麻浦区のライブハウス・サンサンマダンにて、韓国では初となるツアーライブを行った。

ニコチンは1993年に結成、アメリカ、カナダ、メキシコなど世界のステージに立つ、老舗のパンクバンドだ。
今回は自身のライブツアー「SOUNDQUAKE TOUR 2009」の一会場としてソウルを訪れたのだが、彼らが韓国でライブをするのは、これが初めてではない。
2006年9月「サムジサウンドフェスティバル」に出演し、韓国のロックファンに彼らの音楽を知らしめた彼ら。以降、2006年10月「韓日親善ロックフェスティバル」、2008年8月「東豆川ロックフェスティバル」などのライブイベントに登場。韓国でライセンスCDも発売し、徐々にその名を広めるようになる。

ワンマンライブとほぼ同じボリュームで行われるライブは、韓国では今回が初めて。会場には、今までのライブを観てファンになった人から、前日に放送されたテレビ番組を見て関心を持った人、とにかく日本のバンドだから聴いてみたかったという人まで、主に20代を中心とする男女のロックファンが駆けつけた。

また、韓国では既に高い知名度を誇るバンド、エルレガーデンの朋友としても知られるニコチン。エルレガーデンつながりで彼らのファンになり、ライブに訪れたという観客も少なくないよう。
開演にあわせ、まずは韓国のパンクバンド「GUMX(ガムエックス)」がゲストで登場。ハイクォリティーな熱い演奏で会場をあたためた。

やがてニコチンのメンバー4人がステージに立つ。後ろにいた観客も、ここぞと前に詰め寄った。
一曲目は韓国のファンに最も愛されるという歌、『MEST』だ。ギターのShunpさんの「ヘイ、ジャンプ!」の呼びかけに、精一杯高く飛び上がるオーディエンス。『SOUNDQUAKE』『FRIDAY the 13th』『SOMEDAY』といった強力なナンバーが続き、会場の雰囲気は一気に最高潮に。

中盤で韓国ライブに合わせた曲『Ms. LEE/green hot Korean pepper』が披露された。最初に韓国を訪れた時、お世話になったリーさんをテーマに作ったという歌だ。ボーカルHowieさんの、流暢な英語と簡単な韓国語をミックスしたMCに、歓声と笑いが起こる。
ヒートアップしたShunpさんが日本語で叫ぶ場面も。「お前たちの笑顔はどこの国も一緒。おかげでとても楽しいです、ありがとう!」。観客には日本語が分かるファンも多く、分からない人もその思いが伝わったのだろう、拳を高く揚げて応える。

ラストナンバーの『REMEMBER』まで、息をつく暇もない勢いで突き進む。新曲を含むアンコールの2曲では、ファンによる自主的な「みんな前に行こうぜ!」の声で人垣が動き、会場が一体化する場面も。
Howieさんの「またもどって来ます、カムサハムニダ!」の声とともに、全22曲・1時間30分の怒涛のライブは終了した。

「本当に楽しかった。韓国に来るのは4回目ですが、ライブをすればするほど好きになります」とHowieさん。その手には、韓国に来るたびにお土産に買っているという甘いインスタントコーヒーが握られている。
「他の国では会場があたたまるまで2、3曲かかるものですが、韓国では1曲目から、かっちり盛り上がります。コール・アンド・レスポンスにも良く応えてくれるし、聴いたことのない曲でもしっかり乗ってくれる。ライブ自体を心から楽しんでくれているようです」と、 韓国のロックファンへの好印象を話してくれた。

日本の音楽がCDやライブという形でやってくるようになり、まだ間もない韓国。これからもっと、日本のバンドが頻繁に韓国を訪れ、韓国の音楽ファンを刺激してくれれば、また逆に韓国の音楽が日本で聴かれるようになれば、お互いの距離はより近くなるはずだ。

Shunpさんはライブ中、「俺たちは難しいことは分からないけど、世界がひとつになる合言葉を知っています。それは『オイ』です! オイ!」と観客にコールアンドレスポンスを求めた。オイ! の声とともに拳を掲げるオーディエンスたち。
国や言葉の違いを超え、パンク音楽で会場がひとつになった瞬間だった。
(清水2000)
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