小学校では、今も昔もアサガオを育てる。
世の中に花はたくさんあるのに、どういうわけか1年生で育てるアサガオ。
昔は理科、今は生活科(1991年度までの理科・社会科)で、アサガオを育てる学校が多いという。

一体どうしてアサガオなんだろう? 現役の小学校の先生に話を伺った。
「アサガオは、初めて植物を育てる子どもでも育てやすく、毎日水さえあげれば大きくなっていく植物なんですね。また、学校へ着いた朝にちょうど咲いているので、登校するときの楽しみにもなるんです」

さらにアサガオには、教材として適している理由があるという。
「アサガオは、小さな種から芽が出て、葉っぱが広がり、ツルが伸びて花が咲きます。そんな植物の基本となる育ち方の過程で、子どもたちは葉っぱや花の大きさに驚き、まっすぐ伸びないツルを支柱で支えてあげなければならないことなどを学びます。
また、咲いた花は色水にできて、育てた最後には種もでき、その種を次の1年生にプレゼントできるんですね。つまり、成長とともに驚きがあり、ときに対応するため考える必要がある植物として、アサガオは適しているんです」

このことを、文部科学省の学習指導要領では“気付き”と表現している。文部科学省の方によると、
「生活科では、児童たちが植物を育てていく中で、植物の成長と自分の成長を照らし合わせるように授業をしています。アサガオ以外の植物でもいいのですが、アサガオは毎日休まずに世話を続けていると、多くの気付きがあり、自分の成長にも自然と気付ける植物のひとつなんです」

ちなみに学校では、他にも定番の植物がある。例えば「ひまわり」や「ヘチマ」。これらの理由ってなんだろう。
再び小学校の先生に伺った。
「3年生でひまわりを、4年生でヘチマを育てることが多いですが、これらも、その学年の子どもたちの教材として適しているんです。ひまわりの場合、最初は小さかった植物が、自分の背丈よりも大きくなっていく驚きがあります。3年生は、その驚きを得られるちょうどいい身長なんですね。またヘチマは収穫ができ、実でたわしを作ることができます。こうして、学年によって新たに学べる部分があるんです」

小学生のころは、何も考えずに育てていたいくつもの植物。
学年が上がるにつれて、なんとなくレベルが上がってくイメージはあったけど、話を聞いてみると、思ったより深く考えられた教材だった。
学校によって育てる植物は違うものの、共通する目的は、植物の成長を通して子どもたちが成長していくこと。そのうえで1年生にちょうどいいアサガオが、多くの学校に採用されているみたいです。
(イチカワ)