それは、南口のトイレ入口に、大きく掲げられた掲示物。
「女子化粧室」
「男子化粧室」
ご丁寧に、赤い枠で囲ってまである。
ここまで「トイレ」を強調した場所、ちょっと見たことがないのだが、なぜこんなことに?
漢字の下には英語表記もあるのだが、もしかして、中国の観光客など、漢字文化圏の利用者が増え、すぐわかるようにしたとか?
JR渋谷駅に聞いてみたところ、こんな説明があった。
「南口のトイレの掲示は、駅の係のほうで独自の判断で作ったものです。これは、昨年夏ぐらいから掲示させていただいているのですが……きっかけは、もともと駅利用者から『トイレがどこにあるのか』『トイレの場所がわかりづらい』という声がかなり多くあったため、文字で大きく書くことでわかりやすくしようということになったんですよ」
駅構内の掲示物によっては、中国語・ハングル語が用いられているものもあるが、このトイレの表示に関しては、あくまで「文字で大きく書くのがいちばんわかりやすいから」。
「男子」「女子」とその区別が大きく書かれているのも、シンプルに「間違えないように」ということだけだそうだ。
ここでちょっと思い出されるのが、昨年、話題になった愛知県大府市のトイレのマークの男女同一に関する検討事項のこと。
もともと「男女共同参画」の観点から、「女は赤でスカートなどの従来型のマ ークでは区別が固定化されて差別を生む」として、男女同一マークが採用されたものの、「間違えやすい」「区別がつかない」という声も続出したという話だったが……。
差別云々の話は別として、デパートなどでも、「男女」の区別がわかりにくいマークを採用したトイレは多数存在し、「間違えた」「不便」という声はあるもの。
まして、利用者の非常に多い駅のトイレにおいては、「見た目の良さ」や「雰囲気」よりも、やっぱり「わかりやすさ」最優先というのも、うなずける。
最初はギョッとした大きな大きなトイレ表示も、やりすぎではないようです。
(田幸和歌子)