先日、渋谷区内を自転車で走っているとき、小3の娘に「あ! 見て!」と声をかけられた。

指さす先にあったのは、コカコーラ社の自動販売機。
中には、1.5リットルのファミリーサイズのペットボトルが、自販機に中にでん、と並んでいる。

「大きいペットボトルを売ってる自販機なんて、初めて見た!」
と、ものめずらしそうに言う。
「そうだっけ?」などと返しながら、1本買おうと小銭を投入、ボタンを押すと……「搬出中」という事務的なボタンが点灯し、そのままじーっと待たされることしばらく。あまりに時間がかかるので、お金の返却ボタンを押した頃、ちょうど「ごっとっ」と重い音を立てて、大きなペットボトルが現れた。

ここで思い出されたのが、遠い日の記憶である。
かつては、こういった大きなボトル、自販機にあったような気が……。
もしかしてリバイバル? それとも地域差?

日本コカ・コーラ社に聞くと、
「自動販売機の配置は、各地域の販売会社がオペレーションしているため、地域差や割合など、こちらでは把握しておりません」
とのこと。
ただし、1.5リットルのペットボトルの扱いについては、
「もうないんじゃないですか?」

確かに、昔は存在していたそうだが、どんどんなくなった理由について、こんな説明があった。
「当社では自販機を1つのお店と考え、お客様のニーズに合ったパッケージをご提供させていただいております。そんななか、現在はお店自体が多様化し、24時間やっているお店にはコンビニや、スーパーなどの流通系がありますよね? では、現在、お客様が自販機に何を求めているかというと、『即時商品』なんです」

1.5リットル、2リットルのペットボトルは、自宅用・家族用が中心。購買行動から考えると、週末などにショッピングモールに車で出かけて、たくさん買い込む……というパターンが多いのだそうだ。

つまり、「即時性」を求める自販機では、家族用のペットボトルを購入しようという人がほとんどいないということ。
道理である。

また、これは日本コカ・コーラだけの話ではない。
日本自動販売機工業会は言う。
「1.5リットルのペットボトルを扱う自販機は、昔から少ししかなかったはずですよ。地域差もないはず。これは、コンビニなどの影響もあるし、販売機の中にあれだけ大きいものというのは、収容効率が悪くて、必然的に売上本数が落ちてしまうからです。
今はもうないのでは?」

つまり、娘が「珍しい!」と叫んだ自販機は、本当に現在ではなかなかお目にかかれないもののようで……。

渋谷区の街なか、忘れ去られたようにたっぷりの時間をかけて大型ペットボトルを出してくれる自販機は、「効率」の埒外にひっそりとあります。
(田幸和歌子)