お酒の席でよく見かける、ビールの次は“焼酎の水割り”とか“ウイスキーの水割り”と注文する光景。私にとってはなんの違和感もない注文の仕方である。
しかしある時、中国出身の知人が「どうして日本人はお酒に水を入れるの?」と首を傾げたのである。

「どうして?」と言われ、あまりにも唐突な質問に少し戸惑ったが、おそらく焼酎やウイスキーはアルコール度数の高い酒類であるがゆえに、水で薄めて飲みやすくしてるんじゃないかしら? と意見してみた。彼は「それならアルコール度数の弱いお酒を飲めばいいのに」と。

確かにそうかもしれないが、この“水割り文化”は日本だけなのだろうか? ストレートやオンザロックにチェイサーをつけて飲んでいる外国人は多いが、ウイスキーでも水割りにして飲んでいる姿は見かけたことがないかもしれない。そこで外国人がよく訪れるお店のバーテンダーの方に聞いてみた。

「外国人で水割りを注文する方はあまりいませんが、コーラやソーダで割ったりはしていますよ。
あとは、プロの間でもウイスキーは水割りにして利き酒することもあります。ストレートやオンザロックで飲むよりも少し水を足してやったほうが香りや味がひきたつと言われています。ただ、日本で水割りが一般的な飲み方になったのは、日本人はお酒に弱いから水を足して飲むようになったという説もあります」

水割りという飲み方自体はプロの業界でも存在するようで、もちろん外国でも水割りにする場合もあるというお話だった。しかし、一般的ないわゆるお酒の席で“水割り文化”が普及しているのは日本独特のものともいえるらしい。

「ちなみに日本に“水割り文化”があるのは、日本のウイスキーメーカーの戦略とか、コーラやソーダの代わりに和食テイストに水割りにしてみたなど、要因はいろいろとあるようですよ」

ところでコーラやソーダで割って飲むということも言っていたが、それって“ハイボール”のことですよね? そもそも“ハイボール”として日本でソーダ割りやコーラ割りが普及した背景にはどのような起源が?

「ウイスキーのソーダ割りやコーラ割りを“ハイボール”として日本に普及させたのは、“東京ハイボール”というお店があって、そこが発祥だと言われています。アメリカ人の方などは注文するときには『ジャック&コーク』のようにウイスキーの銘柄(ジャックダニエルなど)と割ってほしいもの(コーラ、ソーダなど)をそのまま言ってきますよ」

“ハイボール”という響きからしてアメリカかどこかからきた言葉だとばかり思っていたが、とんだ勘違いだった。
外来語やら和製英語が飛び交っている中で、このような言葉に疑問を抱くと非常にややこしい。その点、アメリカ人の頼み方はシンプルで非常にわかりやすいなといった印象だ。

水割りに関しては起源をたどると非常に奥深いようで……。ただ自分のお酒の飲み方ぐらいはしっかり説明できるようにしないとだな。
(楓 リリー)