みなさんは熊という動物に対して、どのようなイメージをお持ちだろうか。

プーさんやリラックマなど、愛らしい姿で登場することの多い熊に、多くの日本人は「かわいい」というイメージを持っているのでは。
村上春樹の小説の中に「春の熊くらい好き」という有名な表現もあるけれど、熊にはそんなハートフルなイメージがつきものだ。
またある人は、熊に対し「強い」というイメージを持っているかもしれない。「身体が大きい」「毛むくじゃら」と見た目そのままの連想をする人もいるかもしれないが、いずれにせよ熊という動物には、日本人は概ねプラスのイメージを持っているのではと思う。

ところがこちら韓国では、日本と同様に熊のキャラクターが愛される一方で、「熊みたいな人」と言えば、あまりいい意味ではない。
小学館発行の『ポケットプログレッシブ韓日・日韓辞典』を読むと、「コム(韓国語で熊)」の2番目の項目には「(嘲笑して)のろま、とんま」とあり、例文として「クマのように愚かなやつ」と書かれている。
韓国人の頭の中には、「熊=愚か者」という公式が存在するようなのだ。


では実際の熊は、頭や身体の動きが遅いのだろうか? ソウル動物園で熊やレッサーパンダを担当する飼育士さんに質問すると、「そんなことはありません、熊はとても素早いですよ。この動物園で一番怖い動物かもしれません」との答え。
「韓国では確かに、熊はのろまで賢くないというイメージを持っている人が多いですね。でもそれは誤解です」
飼育士さんは見学者の前で、熊に餌をあげながら、彼らがいかに賢い動物かを説明するそう。
「サーカスで熊がよく登場するように、教えたことはすぐ覚えるんです。そんな話をすると、子供たちは不思議がります」

では韓国の昔話や絵本に、「熊=愚か者」を連想させる描写が多いのだろうか。
ソウルにある絵本専門の出版社・サン社に質問すると、「知っている限り、そのような話はありませんよ。かわいらしい熊が登場する絵本はとても多いのですが」との答え。
さらに韓国の神話の中には、熊が人間に変身し人間界の王を産んだという話もあり、熊を神聖視する見方もあると教えてくれた。
「でもおっしゃる通り韓国人は、一方でなぜか熊を愚か者と考えるんですよね。理由はわかりませんが」

 なお、「熊」という言葉は、犯罪集団の隠語で「警察」や「刑事」も意味するという(韓国のポータルサイト『ネイバー』国語辞典より)。こちらはスピード感がありそうだが、いずれにせよ良いイメージで使われているものではない。

動物ひとつにも、お国が変われば違うイメージがあるものだ。そう思ったら、ディズニー版のプーさんがやたら黄色いのも、納得できる気がした。
(清水2000)