いよいよ本格的な夏がやってきた。そんな夏の栄養食といえば、やっぱり土用の丑の日に代表されるように、ウナギだろう。


うな重、う巻きにひつまぶしと様々なウナギ料理があるが、実は関西方面独特の郷土料理“半助豆腐”、これもウナギ料理の一種なのだ。

そもそもこの“半助”とは人の名前のようだが、れっきとしたウナギの一部で、頭の部分のこと。この頭の出汁で豆腐を煮こんだ料理を半助豆腐と言う。

なぜこれが関西方面でのみ食されているのか、滋賀県のウナギ専門店かねよさんにお話を伺ってみた。

「これが関西で食べられるにはちょっとした理由があります。それはウナギの焼き方です。
関東ではまず頭を落としてから調理します。関西では頭ごとタレに付けて焼いてから頭を切り落とすので、タレの付いた香ばしい半助が余ってしまうんですね。これがどうしてももったいない。もったいないなら食べてしまおうというのが、半助豆腐です」
そんな生まれなので、賄いや家庭料理として昔から消費されてきた料理なのだそう。

その由来は半助という人の名前であったなど、まことしやかに囁かれているが、いずれにせよ関西方面である程度のお年の方なら、「ああ、半助ね」とすんなり話が通ってしまうほどのメジャーな食べ物なのだ。
ただし残念なことに世代が若くなるほど、その知名度は下がっていく。

スーパーなどで半助付きのウナギを購入しても、調理の際にポンと捨ててしまう人が多く、「非常にもったいないです」と、ご主人。

そんな半助豆腐の作り方は簡単だ。タレがたっぷりついたウナギの頭と焼き豆腐(もしくは木綿豆腐)、そしてゴボウやネギを出汁、醤油、酒、少々の味醂と砂糖でコトコト煮こむだけ。
「ウナギの頭からええ出汁が出ます」と言う通り、豆腐にウナギのコクが染み渡って、なんともいえない味わいに。
最後に三つ葉や青ネギを飾ればちょっとしたおもてなし料理にもなりそう。

ポイントは頭に付いたタレを洗い落とさず一緒に煮こむことと、半助を入れすぎないこと。
風味が濃いので入れすぎると味がくどくなってしまうのだという。
こんな半助豆腐だが、まず大前提としてウナギの頭を手に入れることが重要となる。

魚屋などで半助付きのウナギを買うもよし、もしくは関西スタイルでウナギを出しているお店ならたいてい頭が余るので、相談すれば分けてもらえることも。
常に分けてもらえるとは限らないが、先ほどのかねよさんでも積極的に半助のお持ち帰りを実施しているそうだ。

しかし熱々を食べることから、これは冬の味覚と、かねよさんは言う。
豆腐だけでなく雑炊や鍋など、オールマイティに使える出汁なのだとか。

ただウナギを手に入れやすい時期といえば夏期間。冬に食べたい場合はどうすればいいのか。
実はこの半助、冷凍が可能。夏の間に手に入れておきまとめて冷凍しておけば、冷え込む秋口に役に立ちそう。

なお、ウナギが手に入らない場合はキスでも代用できるそうだが、やっぱりコッテリとしたタレ付きの半助が一番。

この夏、もし半助付きのウナギを手に入れたなら、夏バテ対策メニューとして、“半助豆腐”を作ってみてはいかがでしょう。

(のなかなおみ)