デパートやファッションビルの洋服屋で買い物をすると、「入口までお送りします」と、店員さんが袋を持って見送ってくれることが多い。

これについては先日、『あらびき団』でリー5世も「あのシステム、いらんねん、照れんねん! 渡されるまで手持ち無沙汰やねん! シバイタロカー!」と憤っていたが、確かに見送られる側としては、なんだかテレくさいし、手持無沙汰だし、気まずい……という人は多いのではないだろうか。


いったいいつ頃にできたシステムなのか。店員さんは店側から指導されているのか。『ファッション販売』(商業界)編集部に聞いてみると……。
「『お見送り』システムは、路面店ブティックや、ミセスショップなどでは昔からあるのでは? ただし、価格帯にもよると思いますよ。1500円や2000円でそこまでやるか? というのもありますし」

もともとは「常連客」「リピーター」になってほしいという願いが込められているはずで、百貨店などがルーツでは? というご指摘。
そこで、日本百貨店協会に聞いたところ、
「お見送りは江戸時代からずっとあるもので、お店側の指導ではないと思いますよ」
とのこと。


続いて、アパレル社員としてトップの成績を重ね、現在はバー経営者をしている男性に聞いてみると……。
「お見送りにはいろいろなパターンがあって、たとえば某店の場合、かつてはフロアに集合レジがあって、そこまでご案内し、レジで会計・袋詰めをしている間、お客さんに待ってもらい、その場で見送りという方法をとっていました。いまは店内レジになり、ショップの外・通路まで見送りするようになっていますが、これを先輩などに教わった記憶はないですね」

バーや美容院などでも「見送り」システムがあるところは多いが、これもやっぱりテレくさい。お客側はどういう態度をすれば良いのか。
「お客さんがどうするかではなく、お客さんにテレくさいと感じさせるのがそもそも、店員側の失敗じゃないかと思います。商品そのものでなく、接客で買っていただいた場合には特に“締め”のトークが大切ですから。
たとえば、商品についてメンテナンスやコーディネイト、着まわしについてなど、次につながる会話ができるのが、『見送り』のタイミング。少しでも長く接客するため、信頼関係を築くトークをする場であって、ただ黙って袋を持って入口まで送るのは、目的が『お見送り』になってるんじゃないでしょうか」

お客さんは買い物をした後、ホッとしていることが多く、会計を終えた後に、入口までの間で他の商品をチェックすることも多いそうで……。
「こういうとき、お客さんの目線に気付くと、接客がもう1度始まることもあります。買うまでと違って、もう店員に勧められない安心感があるから、『今日はもう買わないけど、見るだけ』という方もいます。場合によっては、お客さんの半歩前ぐらいを歩いて会話することもあります。買った後のトークによって、リピーターを得ることもあるんですよ」

なるほど。
「お見送り」は、リピーターを得るための大事なチャンスであって、客がテレて気まずい思いをするのなら、意味はないってこと? 

ってことは、客が気まずそうだったら……「見送りしない」のも、サービスのひとつかも。
(田幸和歌子)