世の中には「一応読んでおこうと思うけど、買いたくはない」という本が、けっこうある。

そんなとき、「図書館で借りる」「ブックオフなどで探す」という人は多いと思うが、これが人気作家の新刊ともなると、図書館で100人以上待ちの事態にガックリ……というのも、また多いパターンだ。


実際、自分などはちょこちょこ図書館に行くにもかかわらず、2~3年間ずっと待ち続けている本がある。
「買えば良いのに」という人もいるだろう。でも、「買いたい本」はやっぱり別であり、そのうちに「読まなくても良い本」になってしまうこともある。

ところで、図書館で何百人、何十人待ちになる本を見るたび、不思議に思うのは、「一番乗りで借りるのはどんな人なのか」「ベストセラーの本は何冊くらい入れているのか」ということ。
そこで、一例として、ある区立図書館に、爆発的ヒットを続ける村上春樹の新作小説『1Q84』(新潮社)について聞いてみると……。
「『1』のほうの予約は現在、589件。
『2』のほうは521件となっております」
!! で、図書館には何冊あるんでしょうか?
「区内全体で21冊分となります」
……気の遠くなるような混雑状況だ。

こういった人気の本を1番で借りる人が、どうしているのかというと……。
「図書館にある『リクエストカード』に、情報を得た段階で記入して、カウンターに持ってくる方が多いです。早い方は新聞やインターネットで情報を得た段階に予約されますよ」
自分の場合、「新聞やネットで情報を得た瞬間に読みたいと思う本=買う本」ということも多いので、その発想がなかった。なるほど。そうやっていたのか。


ところで、何冊入れるかは、どう決まっているのか。社団法人日本図書館協会理事・事務局次長の常世田良さんに聞いてみたところ、こんな回答があった。
「図書館に関しては、市町村の教育委員会が方針を決め、自治体が100%決められるもの。国でもなく、まして図書館協会でもなく、それぞれの図書館が決められるので、何冊入れるかは図書館次第なんですよ」
そのため、「ニーズがいくらあっても購入しない」図書館もあれば、「リクエストが5件あると買い足し」などと決められている図書館もあるという。

さらに、「予約何百人待ち」となる状況については、こんな苦言が。
「借りようと思っても借りられないというのは、本来おかしなこと。
税金を払っている人たちが、税金の使われ方に対してもっと関心を持つべきで、図書館についても、人気のある本をもっとちゃんと貸すように文句を言うべきなんですよ」

アメリカでは、税金ベースで日本の10倍ものお金を図書館に使っているそうで、「自分の街の図書館」に対する意識が全く違うのだという。

図書館で人気の本をいち早く借りる方法を考えるより、図書館のあり方、図書館との付き合い方を、一度考える必要があるのかもしれません。
(田幸和歌子)