家によって「ゴシゴシタオル」とか、名付けを放棄して「体洗うやつ」とかいろいろ呼ばれてる、お風呂のボディタオル。中でもザラザラしたナイロンタオルは、今も昔も多くの人に使われている。


そんなナイロンタオルを使うたび、疑問に思うことがひとつ。それは、どうしてフワフワのタオルやスポンジあたりで満足せず、ゴシゴシ感があるナイロン製のタオルが生まれたんだろうってこと。江戸時代から使われてきたヘチマを、洗いやすく変化させたものなんだろうか。

調べてみると、世界初のナイロンタオルは、1966年の日本で生まれていた。開発したサラックス株式会社に、その経緯を伺った。

「きっかけは、売ることができない糸の処分でした。
化粧パフの製造販売をしている当社に、繊維会社から、使い道のないナイロン糸が持ち込まれまして。当時、ナイロン糸はストッキングや女性の肌着、釣り糸などの細い糸しか用途がなかったので、細いナイロン糸の生産工程でどうしても発生する太い糸は困りものだったんですね。そこで、初代社長が浴用ナイロンタオルを考え出したんです」

発売当時のキャッチコピーは「魔法のヘチマクロス」。なぜ初代社長が体を洗うタオルを思いついたかは、今となっては“ひらめき”としかわからないものの、ヘチマやレーヨンのあかすりタオルがヒントになったかもしれない、と担当者は言う。つまり体を洗う商品を作ろうってことが出発点じゃなく、捨てるはずのナイロン糸の使い道を考えた結果、偶然生まれたものだったってわけだ。
そして発売後、ナイロンタオル「サラックス」は爆発的にヒット。
海外へも輸出されるようになっていった。

「発売当時は、お風呂自体があまり家になくて、みなさん銭湯を利用されていたようで。そのとき石けんと一緒に、サラックスのナイロンタオルを持って行く方がよくいた、という話は聞きますね」

発売から40年以上、ナイロンタオルは進化を続けている。当初、機械の不備から凸凹を出すことさえままならなかったタオルは、間もなく品質が安定。今では使う人のターゲットを絞り、やわらかさや大きさなどを工夫した、多くの種類が店頭に並ぶようになった。最近は、泡立ちがいい製品が特に売れているんだとか。
もちろん今は、繊維会社が捨てるはずの糸は使っていない。

「タオルのコンセプトによって、さまざまな硬さのナイロン糸で作っています。また、高品質なものにはアクリル繊維を使うなど、素材も変えています」

ちなみに最近の店では、女性向けとして、やわらかい肌触りの商品が充実。そのせいか、逆にこんな流れもあるんだとか。
「当社で圧倒的に多いお問い合わせが“硬めのものがなかなか見つからないので、どこで売っていますか?”というものなんですよ」
選択肢が広がり、やわらかめ好きが増えてる一方で、かため人気も根強いみたいだ。

今も変化を続けている、お風呂のナイロンタオル。

糸の処分という偶然がなければ、僕らはもっと違う何かで、体をゴシゴシしていたのかもしれません。
(イチカワ)