それにしても、自分の子ども専属のカメラ小僧と化した知人の姿を見るのは楽しい。俺も子どもができたら、あんな風になるのかな……。
そんな来たるべき将来、もし自分がカメラ小僧になるとしたら、こんなスナップを撮ってみたい。どんなスナップかというと、10月10日にピエ・ブックスから発売された『オヤバカちゃん。』(税込1,680円)という写真集で紹介されている、ちょっと不思議な写真たちのような。
この『オヤバカちゃん。』は、映像ディレクターでDVD制作なども手がけている田野隆太郎さんと、フォトグラファーで雑誌・広告全般の写真を撮影している村上浩次郎さんが制作したもの。
内容は、「かわいいわが子を写真に収めてみましょう」というススメなのだが、その写真が普通じゃない。中に掲載されているのは“進化型コドモスナップ”とでも言うべき、おもしろ写真たち。巨大になった我が子が街をのし歩いていたり、鯉のぼりと一緒に空を飛んでいたり……。まったく新しい写真の遊び方を提案する1冊である。
こういった写真は、デジカメ・パソコン・「フォトショップ」というソフトの3点があれば簡単に作成できる。これらを使い、我が子とお気に入りの風景とを合成し、家族で楽しむことを推奨している『オヤバカちゃん。』。
写真を撮る際の注意点は、子どもの写真と合成する背景の写真の光の方向を合わせること。合成が不自然にならないように、光の方向を同じにして撮影することが“オヤバカシャシン”の基本である。
これらの写真に関する反響も続々届いている。今までに“オヤバカシャシン”の写真展は数回開催されており、当然ながら小さい子を持つ親御さんが写真集を購入していくことが多い。また、主にカメラ好きの中年男性と、20代のデザインに興味を持つ女性の訪問も目立っているようだ。ファミリー層と、カメラ・デザインに興味を持つ人たちから、“オヤバカシャシン”は好評を得ている。
中でも面白い反応は、「これ、よく撮れたね。本当にどうやって撮ったの?」。要するに、リアルなスナップだと勘違いしてしまう人もいるのだ。
こういった反応は、実は狙い通りかもしれない。“オヤバカシャシン”のコンセプトは、「本当に有り得るんじゃないか?」と一瞬思わせるような、絶妙な按配での合成。現在売られているデジカメには、元々用意されている背景と被写体を合成させる機能がついた物もある。しかし、田野さん達は敢えて“リアリティがあるんだけど、よく考えたら絶対に有り得ない写真”という方向性を目指した。その代表格が、新幹線の先頭をすべり落ちる子どものスナップ(画像は『オヤバカちゃん。』ブログでチェック)。
他にも、巨大なはすの葉に子どもが寝そべっている写真や、皿の上に座って回転寿司と一緒に回っている子どもの写真、川に浮いているお椀に子どもが乗っている“一寸法師”風の写真、などが人気を博しているようだ。
今では、写真を撮ってもパソコンに入れて終わりという人が多いと思う。大抵の人は、わざわざプリントまではしない。
この本では、「そんな風にないがしろにされていく写真を、有効活用する方法を提案したい」という意味合いも込められている。可愛い我が子の写真と、お気に入りの風景写真をドッキングした“オヤバカシャシン”は、年賀状に使っても楽しいだろう。
11月5日~15日には、東京都三鷹市の「オガワカフェ」(TEL:0422-45-2110)で写真展を実施。
こんな撮り方で可愛い我が子の写真を作ってみるのも、なかなか面白いのではないか。カメラのシャッターを切るパパと、被写体の子ども、指示を出しつつ子どもを見守るママのチームワークで、優れた“オヤバカシャシン”は出来上がる。
(寺西ジャジューカ)