「蝋(ろう)人形の館」と聞いてテンションがあがるのは、私だけではないはずだ。
世界の有名人や架空の人物(に似せて作られた人形)が、夢の中の出来事のように一堂に会する蝋人形の館。
すこぶる豪華でありながら、時には脱力感もあるその世界に魅了され、「東京タワー蝋人形館」をはじめとする、各地の蝋人形館を巡礼したB級スポットマニアも少なからずいることだろう。

そんな蝋人形館ファンに朗報。今年7月、お隣韓国にも初めて、本格的な蝋人形の館が登場した。
その名も「63ワックスミュージアム」。ソウルを見下ろすビュースポット、63ビルの地下3階に位置するこの博物館には、500坪の施設に70点以上の蝋人形が展示されている。
オープン2カ月で集客2万人を達成したというこの人気スポット、私も例にもれず体験してきた。


完成して間もないこともあり、館内は清潔な雰囲気。そこに、日本の蝋人形作家・松崎覚氏が手がけた、驚くほど精巧な蝋人形がずらりと並ぶ。
気になる人形のラインナップは、ピカソやアインシュタインといった偉人から、時の人であるオバマやイチローまで様々。韓国ならではの人物として、ペ・ヨンジュン、イ・ビョンホン、チェ・ジウといった韓流スター、読売ジャイアンツのイ・スンヨプ選手、2002年ワールドカップで活躍したヒディンク監督、キム・デジュン元大統領などの姿も見られる。
実在の人物の他にも、ドラキュラや狼男といった架空のキャラクターが登場。世界の蝋人形館でお馴染み、死刑囚などのおどろおどろしい蝋人形が並ぶ「恐怖体験館」も、もちろん用意されている(12歳以上観覧可)。


そんな蝋人形の中に、印象的な後姿が。ストライプのシャツにロン毛という独特なファッションのその男性は、マリリン・モンローを眺めながら微動だにしない。近づくとこれも蝋人形であった。
ただしその顔にはまったく覚えがない。恍惚としているような、あるいは何かをたくらんでいるような、見れば見るほど味のある表情のこの東洋人は、係の人の説明によると「普通のおじさん」の蝋人形であった。
「写真を撮ってくれと、間違って声をかけてしまう方もいるんですよ」とのこと。
なるほど、館長の遊び心によって、アトラクションのひとつとして置かれていたわけだ。
なお、この博物館には普通のおじさん蝋人形が3体隠れているということなので、探してみてもおもしろい。人形かどうか怪しい人を見かけたら、どんどん話しかけていこう。

63ワックスミュージアムには蝋人形の外にも、360度の立体映像が楽しめる「メガ5Dシアター」や、レッドツェッペリンのサイン入りギター、ジョン・ウェインの帽子などお宝グッズを展示するコーナーがあり、カップルから家族連れまで楽しめる内容となっている。
蝋人形はどんどん増えていくということなので、今後どんなラインナップで攻めてくるのか、楽しみにしたいところである。
(清水2000)