そもそもフードはなんのために付けるのか。
「レンズ内に余計な光を入射させないためです。不要光がレンズに入射すると、像のコントラストが低下してしまいます」
そうそう、とくに不要光が入りやすい逆光での撮影ではフレア・ゴーストが発生しやすいのだ。同現象についての詳細はコネタ記事「逆光でキレイに写真を撮るには?」参照。
つぎに、フードの長短の違いがあるのはどうして?
「広角レンズのように画角が広くなる(焦点距離が短い)ほど短く、望遠レンズのように画角が狭くなる(焦点距離が長い)ほど長いフードになります」
穴の開いた筒を覗くと、筒の長さが短いと広い範囲が見える。長くなると見える範囲が狭くなる。フードの長さはこの原理と同じで、撮影範囲がケラレ(画像の一部が欠けること)ないようにするには広角では短く、望遠では長くなるのだ。
では、いよいよ花形フードの理由を探る。
これは被写体の像が写り込む35ミリやAPS-Cサイズ撮像素子の形が大きく影響している。
「撮像面は通常は横長の長方形です。そのため、フードの上下が長く、左右が短いフードの装着が可能になります」
つまり、横長の長方形の撮像素子は写り込む画角が上下方向は小さく、逆に左右が大きくなるという特性がある。その特性にフードの形を合わせた結果、花形となるのだという。左右が長いフードだとケラレが生じてしまうので。ちなみに、もし撮像素子が円形だったら、フードはすべて丸形になるそうだ。
ただし、ピントを合わせるときに前玉(前方レンズ)が回転するタイプのレンズでは花形フードは使えない。
「フード装着部がピント合わせの時に回ると、フード自身がピント合わせと同時に回転してしまいます。すると、花形フードの場合、上下左右の長さが異なるため、必要な光がケラれてしまうのです。なので、その場合は、短い長さに合わせた丸型フードを装着します」
カメラレンズは光が入り過ぎると駄目だったり、望遠・広角によって光の入り方がちがうといったデリケートなところがある。レンズフードはそんな気難しいレンズを手助けして、いい写真を実現するいわば「縁の下の力持ち」なのである。
(羽石竜示)