芸人で、“怪談話”ができる人はオールマイティらしい。しっかりとしたフリで人を惹きつけ、最後のオチで相手を恐怖のドン底へ。

そのためには、話に信憑性があるかどうかは二の次だ。ちょっとした脚色で話に深みが出るのならば、話をトバしにトバしてたとしても、そこにツッコむのは野暮と言うもの。
だけど、私は基本的に“信じる派”。霊現象なり怪奇現象があっても「おかしくない」と思うタイプ。

だが、そんな人種にこそ行ってほしい企画展があることをご存知だろうか? 3月10日から5月31日までに日本科学未来館で開催中の「お化け屋敷で科学する! 2 ~恐怖の実験~」なるイベント(火曜休館日)が、目からウロコものの体験をさせてくれるという。

このイベントのコンセプトは「人間が恐怖として感じるさまざまな怪奇現象を、物理学、化学、生物学などの先端科学で解き明かす」。我々が日常生活で感じる「今の、オバケ!?」という恐怖体験の理由を、わかりやすく説明してくれるのだ。

そこで、実際にお邪魔しに行ってきた私が、内容を“体験リポート”という形でご紹介をさせていただきたいと思います。

展示会は4つのエリアで構成されており、これが緻密なプログラム。
まず、初っ端の“体感エリア”は、要するにお化け屋敷。日本の古い民家をイメージしてつくられた空間で、実際に恐怖を体感させてくれる。
中にどんな仕掛けがあるかは行ってのお楽しみだが、バカにできない怖さが待っていることだけは確か。
だって入り口で順番を待っている時、すでに中から「キャーッ!」なんて悲鳴が聞こえてくるのだから。いざ入場すると、音なり、動きなり、視覚なり、さまざまな手段で恐怖を呼び起こされ、いい大人(32歳)の私が思わず「……ウオォーッ!」とビックリ声をあげてしまったのだから、明らかに子供ダマシではない。

次は“学習エリア”。体感エリアで体験した心霊体験や超常現象の正体を、科学的に解説してくれるゾーン。パネルなどを使って、様々な“怪奇現象”が起こる理由が解き明かされる。
たとえば、“髪の毛が伸びる人形”の原因だとか、人魂の正体とか、ポルターガイスト現象が起こる理由とか、ラップ音はどうして鳴るのか、とか……。ついさっきまで自分が恐怖を感じていただけに、これらの現象に対する解説も最高に興味深い。

そして、これが楽しい“観察エリア”。内容は、先ほどの“学習エリア”で怪奇現象の科学的根拠を学んだ我々が、後から来るお客さんに恐怖を与える。それによって、恐怖におののく人たちの表情を、客観的に観察するというもの。
ブースには、備え付けのボタンが設置されている。これを押して、音・光・振動を駆使した仕掛けを操作。
それによってビックリしている後続のお客さんの表情を観察。現象の理由を知ってる我々と、まだ知らない人たちの違いを味わうのだ。

最後は、“体験エリア”。まず、なぜか置いてあるプリクラ機。これで撮影すると、どうしても霊が写りこんでしまう。要するに、心霊写真を疑似的に作り出すことができるプリクラ機だ。
もう1つの見どころは、備え付けのヘッドフォン。これを聴いてみると、大人には感知できない“モスキート音”が流されている。この音に敏感な人は「今、何か聞こえた? 私って、霊感強いのかも……」なんて風になるのかも。私も聴いてみたが、確かにチョット高めの音は感知できた。でも、もっと鮮明に聴こえる人にとっては、メチャメチャ嫌な音らしい。だから、不吉な音に感じるというワケか。


……と、盛りだくさんのプログラムを楽しんだ私なのですが、この企画展の諸々についてを、同館の担当者に伺ってみました。
まず、この企画展を開催した目的は?
「最も皆さんに伝えたいのは“物には必ず原因がある”ということです。科学とは、未知のものを解き明かすことで発展してきました。理由がわからないからこそ起こる“恐怖”に、『ナゼ?』と疑問を持ち、原因を探ることで文明は発展していきます。ですから、本当は怖がりの人に来ていただきたいんですね(笑)。そして、怪奇現象の理由を知っていただきたいんです」

そんな想いが込められた今回の企画は、まさに大盛況。私が伺った日も、小学校の社会科見学だったり、カップルだったり、客層は千差万別。ただ一つ言えることは、「お化け屋敷に行ったことがない人も、来る」ということ。なぜなら、怖がることがこの企画展の目的ではないから。

恐怖を踏まえて、科学を学ぶ。逆に言えば、科学の発展に“恐怖”は不可欠。我々にとって、非常に大切な感情なのかもしれない。

(寺西ジャジューカ)
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