これは、信州で、農作業の間に食べるおやつのこと。
子どもの頃、農家の親戚の家で、ブドウの傘かけをしたり、稲まるけ(刈った稲を稲藁でまるける=束ねて縛る)のお手伝いをときどきやらせてもらうのが楽しみだったのだが、何より待ち遠しかったのは、畑のなか、あるいは田んぼの近くの農道で食べる「お小昼」の時間だった。
お小昼で食べるものは、おにぎりや、信州名物の「おやき」「にらせんべい」「薄焼」、漬物、煮物、畑でとれたリンゴやブドウなど。地域によっては、柏の葉で包んだ「きな粉おむすび」なども定番らしい。
子どももそれぞれ自分の仕事を与えてもらうという達成感があり、一仕事終えて、みんなで一緒に畑で食べるお小昼の美味しさというのは、格別だった。
そんな「お小昼」を、体験プログラムとして行っているところがあるという。「国営アルプスあずみの公園」だ。管理センターに話を聞いた。
「開園して6年になりますが、『お小昼体験』を始めたのは、5年ほど前からです。もともと農作業をするときは、時間が遅くなるとどんどん暑くなってしまうため、朝早くから行うもの。でも、朝早くから作業をしていると、どうしても小腹が空くので、ちょっとしたおやつが食べたくなる。それが昔の風習『お小昼』で、こちらでは昔のかまどで木をたいて、お米を煮て、自分でおにぎりを作って食べるという体験を行っています」
自分で作ったおにぎりは、敷地内の古民家の土間や、緑地で食べるのだという。1回20人の予約制で、日曜祭日のみ行っているものだが、「お子さま連れの方の体験が多いですね」とのこと。
「『お小昼』という言葉そのものの説明からすることも多いですが、『昔のかまどでお米を煮ることが珍しい』という声や、『おにぎりのカタチが悪くても、自分で作るのは美味しい』という声が寄せられています」
「お小昼」は、日常で毎日取り入れられていたというよりも、「主に、田植えや稲刈りなど、人が多く集まるときに行われていたのでは?」というように、「大勢で外で食べるおやつ」としての記憶が強いもののよう。
とはいえ、ただのピクニックと違うのは、「早起きして、働いた後に食べる」充実感があるから。
農作業の合間に……というわけにはいかなくとも、たまには朝早く掃除や用事・仕事をすませて、外で「お小昼」気分、味わってみませんか。
(田幸和歌子)