小さい頃は、自分の好きな物と一緒にベッドに入り、その体勢のまま寝てたりしてた。たとえば、横にズラッとキン消しを並べて、そのまんま夢の世界へ……。
今考えると笑っちゃうが、愛する物たちには眠ってる時も近くにいてほしかったのだ。

だからこそ、このホテルルームは鉄道ファンに垂涎もののハズだ。秋葉原ワシントンホテルでは、室内に鉄道ジオラマを設置したルームを6月15日より開設したという。その名も「クハネ1304」。

このルーム内にあるジオラマ、全貌が実にスゴいのだ。線路の総延長は約30メートル、広さは約4平方メートル。
L字型で、同時に4路線の操作が可能。同ホテルを中心とした秋葉原の街並みと東京タワーを精巧に再現し、山の中腹には同ホテル関連施設の「箱根小涌園」を配置。しかも、製作費は約300万円……!

デザインの監修は、鉄道模型が走るバー「銀座パノラマ」の鈴木邦夫氏が。ジオラマの作成は、ジオラマ・模型製作のプロ集団「株式会社ディディエフ」が、それぞれ担当。まったくもって、文句つけようのない力の入れようである。
そして基本、ジオラマ上に走らせる車両は宿泊者が持参するのだが、1,000円でホテルからのレンタルも可能だそう。


そんな、マニアにとっては夢空間なルームを開設したきっかけは? ホテルに直接伺ってみた。
「当ホテルは、秋葉原で27年間営業していたのですが、2年前に建て壊しをして今年の5月15日にリニューアルオープンしたばかりなんです。そこで今回、古くから付き合いのある“秋葉原”をテーマにしたルームを作ろうと思いました」(担当者)

そのテーマに関してだが、当初は“家電”もしくは“アニメ”なんて題材も挙げられていた。しかし最終的には、若者からお年寄りまで幅広い層に人気のある“鉄道”を第1弾に採用。「長い歴史の中、だんだんと変わってきた秋葉原の街並みと一緒にホテルも変わっていこう」という想いが込められた。

そして、もう一つの目的も。

「ただ寝るだけじゃなくて、『寝るのもったいないね』っていうくらいの部屋を提供したいと考えたんです」(担当者)

そんな特別なルームへの反響は、ホテルの方にも寄せられている。
「時代を反映しているのか、問い合わせは非常に増えております。その声も、かなりマニアの方(?)からだったり、お子様のいるお母様からだったり、様々です。マニアの方からのお問い合わせの場合は、専門的な質問でホテルスタッフでもわからない時があり、製作者に聞いたりもしました」

実際に宿泊したお客さんは、年齢・性別ともにバラバラだったという。20代会社員から60代おじいちゃん、はたまた子供連れの主婦なども利用。しかし「恐らく、鉄道ファンの方がほとんどです」(担当者)という点は共通しており、Nゲージを大切に押入れに保管しているような人が泊まりにきているようだ。


気になる予約状況は、「8月までかなり入ってますが、取れないわけではありません」(担当者)。なんら、尻込みする必要はない

ちなみに、「クハネ1304」の「クハネ」とは鉄道車両の記号のこと。「ク」とは運転台のある車両を表し、「ハ」は普通車を、「ネ」は寝台車を意味する。この部屋の窓からは、秋葉原~神田間の鉄道ビューが望めるという。

鉄道の街で、寝台車に泊まり、鉄道を眺めて、鉄道模型を走らせる。
もう、こんなにも“鉄道”づくし。

(寺西ジャジューカ)