赤色・水色・黄色・黄色。
これは、「2010 FIFAワールドカップ」南アフリカ大会で、日本戦を担当した審判のユニフォームの色。

今大会、審判のユニフォームで使われている色は、赤・黄・水色・黒の4種類。その中から、両チームのユニフォームの色と系統が重ならないよう、選ばれている。

そこで、今さらながらの疑問。昔って、審判のユニフォームといえば黒だったはず。どうしてカラフルになったんだろう。日本サッカー協会の松崎康弘審判委員長に話を伺った。

「例えばJリーグでは、各チームがユニフォームの色を自由にデザインできるよう、ワールドカップが採用する以前から、カラフルなユニフォームを取り入れています。審判が黒一色ですと、黒に近い紺などのユニフォームは作れないですよね。そこで、数色そろえているんです」

ワールドカップの審判がカラフルになったのは、1994年のアメリカ大会。上半身の色を、金・銀・ピンクから選べるようにした(具体的には、それぞれ黒が混ざったグラデーション模様)。その大きな意図は、フィールド上を華やかにするため。観客を意識した演出として、長く続いてきた黒という伝統が崩された。


ただ、そもそも審判のユニフォームがずっと黒だったのは、伝統とはいえ単なる「名残」という側面が大きかった。裁判官の黒い服に「どんな色にも染まらない」という意味があるのとは、どうやら違う。
その昔、サッカーが発祥したころのイングランドでは、「サッカーは紳士のスポーツだから、紳士は故意に反則を犯さない」という原則があった。何かあれば、試合中にキャプテン同士が話し合って、解決していた。
ところがプロ化など、選手にお金が支払われるようになったことで、解決が難しくなる。そこで19世紀に、両チームとは関係ない中立な立場の1人が、審判員として仲裁役になった。

そしてこの審判は、今のようにピッチ上ではなくスタンドにいて、何かあったときだけ仲裁に入る形で参加していた。そんな彼が着ていたのが、スタンドで見守る英国紳士らしい、黒の正装だった。その名残として、黒い審判ユニフォームが伝統のようになったってわけ。

ちなみに、選手と審判のユニフォームの色は、原則的に以下の順番で決まるという。

 1. 両チームのフィールドプレイヤー(ゴールキーパー以外の選手)のユニフォームの色を決定
 2. それに合わせて審判ユニフォームの色を決定
 3. 以上をふまえて、両チームのゴールキーパーユニフォームの色を決定
 4. ゴールキーパーの色がどうしても審判と重なる場合は、審判の色を変更

ゴールキーパーが、審判のあとだったとは。しかも、両チーム合わせて4種類のユニフォームの色が、どう組み合わせても審判の色とかぶる場合は、両チームのキーパーを同じ色にして対応するんだとか。
審判ユニフォームのカラフル化で、ゴールキーパーがこんな扱いになっていたなんて。

さあ、ワールドカップも大詰め。
今大会は誤審が目立っただけに、決勝は、鮮やかでカラフルなユニフォームの審判に気づかないほど、ストレスのないレフェリングになりますよう。
(イチカワ)