暑い! ともかくお酒が飲みたい!――日々、そんな夜の1杯を楽しみに過ごしている人も少なくないかもしれない。

ところで、「いまの女の人にはお酒が強い人、多いよね」などという指摘をよく耳にするが、『かくれ躁うつ病が増えている』(共著)を持つ、医療法人社団榎会・榎本クリニックの深間内(ふかまうち)文彦院長によると、「女性の飲酒率は伸びているものの、男性に比較してアルコールによるリスクは高い」という。


「『国民栄養調査』によれば男性の飲酒率は減少しており、特に20代・30代の若い男性では、習慣的に酒を飲む人の数が減り続けています。いわゆる草食系男子の酒離れですね。それに対して、絶対数こそ男性に比べれば少ないものの、女性の習慣的な飲酒率は顕著に伸びていて、20年で2倍近くにもなるんですよ」

これには、女性の社会進出が進み飲酒の機会が増えたことのほか、アルコール飲料メーカーが女性にターゲットを当て、「糖質オフ」「カロリーオフ」と銘打った健康志向のキャッチコピーで宣伝・浸透していることなども影響しているよう。

ただし、女性の飲酒には、男性と異なった問題があるのだという。
「女性の場合、習慣的な飲酒(週3回以上、1日にビール大びん1本または日本酒1合相当以上)からアルコール依存症に至るスピードが速いといえます。男性では20年前後をかけてなることが多いのに比べ、女性では数年、早ければ1年でも酒びたりの日々になってしまうリスクがあるということです」
その理由は、通常男性に比べれば女性は小柄であることから、身体の血液量も少ないため、どうしてもアルコールの血中濃度が高めになりがちだということ。
脂肪の多い女性では、アルコールは脂肪に溶けにくいため、さらにこの傾向が高まるのだという。

「さらに、女性ホルモンはアルコールの分解を妨げるために、アルコールがいつまでも体内に残りがちになります。女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌が多い月経前は酔いやすいといえます。逆に、閉経後に酒に強くなったという人もいますが、エストロゲンが減少したことが一因かもしれません」
つまり、飲酒期間が長期間でなく、量がそれほど多くなくても、女性はアルコール依存に陥りやすく、当然肝硬変などの身体的ダメージも起こりやすくなると考えられるのだそうだ。

さらに、主婦の場合は、ストレスなどから、自分のテリトリーである台所でお酒に手が伸び、家族が気づかないうちにコントロール不能になる「キッチンドリンカータイプ」が多いというが……。
「男性の場合は、社交としての『つきあい酒』からはじまり、気晴らしや眠るために飲むという目的で長い期間をかけて進行していくのに対して、女性の場合は日常生活上の具体的な問題(失恋、育児、仕事、介護、夫との関係など)をきっかけに飲み方に変化が現れることが多いという特徴もあります」

他にも女性には以下のような問題があるそうだ。

 ・卵巣の機能を抑制するため、生理不順や無月経、肌荒れを起こりやすくさせる
 ・アルコールの利尿作用により、失われた水分を補うために血管内にとりこまれた水分の一部が『むくみ』として現れる。塩分の多いつまみ類も「むくみ」の影響になる
 ・乳がんの発生率が高いという報告もある

言うまでもないが、アルコールは「適量」と「休肝日を持つこと」が大切。ご注意を。
(田幸和歌子)