新潟県でのみお馴染みとなっている日本酒が、海を越えなぜか韓国でヒットしている。
そのお酒の名は「がんばれ父ちゃん」。
新潟県の蔵元である白龍酒造が手がける、新潟県産の水とお米を使ったパック酒だ。口髭・赤ら顔の父ちゃんの、かわいいイラストが描かれているパッケージは親しみやすく、価格帯もお手ごろそうな印象を受ける。

10年ほど前から存在し、日本では100%に近い量が新潟県内で販売されているという(流通を担う新潟酒販による)、このお酒。
新潟県民ではない筆者には全く聞き慣れない名前だったのだが、韓国に住むようになり、そのインパクトのあるパッケージをいたるところで見かけ、いったいこの、日本語学習者が知ってる単語を並べたようなカジュアルな名前の日本酒は、本当に日本でつくった日本酒なのかと(失礼)前々から疑問に思っていた。

日本酒は「サケ」と呼ばれ、数年前からソウルの若者たちを中心に、人気を集めている。焼き鳥や揚げ物など、日本の居酒屋でも定番の料理をつまみにサケを提供する日本風居酒屋も増殖中だ。

がんばれ父ちゃんは、そうした居酒屋の棚に高い確率で並び、見た目のインパクトも後押しし、まるで日本を代表するサケのように目に飛び込んでくる。お店によっては、「がんばれおとうさん」「がんばれおとっちゃん」など、しばしば違った名前でメニューに書かれていることもご愛嬌だ(でも意味は間違っていない)。

ソウル市新沙洞の居酒屋「アタミ」の店長によると、「味も価格も標準的ですが、“あの顔のサケ”ということで人気があります」。
取材時にお店を訪れていたスーツ姿の男性客も、「名前がいいですね。仕事の後に飲みたくなる」と話してくれた。「がんばれ」も「父ちゃん」も、韓国人には馴染みのある日本語なのだろうか。
あるいは、日本語がわかるお客さんが、話の種に注文することがあるのかもしれない。

がんばれ父ちゃんの人気について、このお酒を4年ほど前から韓国で輸入販売している、テサン酒類に話を聞くと、「20代から40代前半を中心にとても反応が良く、居酒屋を始める人に推薦しているサケです」とのこと。「韓国焼酎のようにやや甘口で、度数が高くないことから、お酒をストレートで飲むことが多い韓国人の好みに合うようです。そしてやっぱり名前がいいですね」。

がんばれ父ちゃん。そのありそうでなかった商品名が意外にも、韓国のお父さんにもエールを送っていたのだと思うと、日本を代表するサケのひとつとして、ぜひとも応援したい気分になります。

(清水2000)