世界の登山界が今、揺れている。
と言うのは大袈裟だけれど、話は今年の4月。
韓国の登山家が、女性初の世界8000m峰全座(14座)登頂を成し遂げた。が、ここに疑問の声が上がったのだ。14座のうちの1座で、最高点まで到達していなかったのではないかと。お膝元の韓国の山岳連盟も「登頂を認めない」とコメントし、話はややこしくなっている。

ところで、普通、「山に登った」と言えば「最高点に登った」ことを言うが、世の中には、最高点まで行かなくても「登った」と認められる山がいくつかある。ちょっと紹介しよう。


(1)富士山とキリマンジャロ
片や日本の最高峰、片やアフリカの最高峰。山頂の標高は3776mと5895m。どちらの山も、最高点まで行かなくても、通常、「登った」と認められる。

富士山の頂上は大きな噴火口になっている。水を注いだら、きっと大きな湖ができる。火口を一周すると、1時間以上かかってしまう。

3776mの最高点は「剣ヶ峰」と呼ばれ、噴火口の縁の一点にある。が、ここまで到達しなくても、噴火口のどこか(標高3720mくらい)に到達すれば、「登った」と認められる。
富士山の場合、毎年何十万人もがトライするので、みんなが狭い「剣ヶ峰」を目指したら大変なことになってしまう。そんな事情もあるんじゃないかと思う。

さて、キリマンジャロも富士山に似た形のきれいな山。最高点の「ウフルピーク」(5895m)まで行けなくても、200m以上低いが火口の縁である「ギルマンズポイント」(5681m)まで登れれば、登頂証明書がもらえるそうだ。


(2)浅間山と利尻山
どちらも日本百名山。共通するのは「最高点に行くのは危険」ということ。
浅間山は絶えず噴煙を上げる火山。危ないので最高点(2568m)は立入禁止。しかし、百名山を目指す人にしたら、いつまでたっても百名山登頂が達成できなくて困ってしまう。というわけなのか、少し手前にある前掛山(2524m)、または黒斑山(2404m)まで行けば、「浅間山登頂」と認められている。


一方の利尻山は、北海道の海に浮かぶ名峰。北峰と南峰の2つの山頂があって、南峰(1721m)の方がちょっと高い。でも南峰への道は崩れていて危険。だから、北峰(1719m)に登れば「登頂」ということになっている。

最後にまとめを。登山は所詮、自己満足の世界。
「人類初」とかの記録じゃなければ、自分が登ったと思えればいいわけで。最高点にこだわらなくても、いいのかもしれません。
(R&S)