ここ数年、内食ブームに押されて家庭菜園が人気だが、栽培物の中でも高レベルな立ち位置にあるのが“お米”だろう。

個人で作るにはちょっと尻ごみしてしまいそうになる米。
この米を簡単に作ってしまおう。という面白い試みにチャレンジしている会社がある。
その名も“どこでも田んぼ”。シップスレインワールド株式会社さんと世田谷アドベンチャークラブさんが手がける、都市型の田んぼのこと。
1日中、太陽が当たる場所であれば、ベランダから屋上。さらに駐車場まで、その名の通りどこにでも作れてしまう田んぼなのだそう。

まず作りたい田んぼの場所を決めたら、登場するのは厚手のベニヤ板。
四方+床部分のベニヤ板を組みたてたら、中に田んぼ用の土を広げる。2種類の土を交互に入れて踏み固めれば、これが土台となる。
広さは各自お好みで。もちろん足を踏みいれ田植えができるサイズだと気分を味わえるが、小さな田んぼも作れるそう。

後は主役である苗を室内である程度育てれば、いよいよ田植えだ。

ここまでが4~5月の作業。

このあとは収穫に向けて、草刈りや土が乾かないように給水するなどのこまめな管理が必要なものの、稲穂の開花や田んぼに住む生き物を発見する楽しみも。

やがて秋が到来すると、この田んぼにも収穫の時がやってくる。小さな田んぼなら機械は必要無い。自分の手で刈り取り、脱穀すれば後は食べるだけ。
そして収穫後にベニヤ板を片付けてしまえば、地面を傷つけることなく撤収可能。
土台を残し翌年に持ちこすこともできる。その場合、5年ほどは同じ土台で繰り返し田んぼを作成することができるという。

気にかかるのは水道代だが、降った雨を専用の水タンクに溜めこむシステムを導入。雨水を使うので水道代もかからないのだとか。
お値段は条件にもよるが、3×5メートルで50万円ほど。

しかしなぜこのような試みを始められたのか。

「地球温暖化の抑制。そして有機農法で栽培しますので、農薬の問題や自給率の問題などを知る食育にもなります」
という。
それだけでなく、米の味も良いそうだ。自分の手で苗から育てたというフィルタがかかっているだけではない。
「通常販売されている米は、いくつかの田んぼのブレンド米です。単一の田んぼで育てた米は他の味が入らないので、純粋にお米の味を楽しめるんです」
何よりも実際自分の手で作ることで、米作りの大変さ、大切さを知ってもらいたいという希望もある。

ところでお茶碗いっぱいのお米、稲なら何束になるかご存じだろうか。
実に稲、3束分なのだとか。
1束の稲を育てるのに20リットルの土と水が必要、ということは60リットルの土と水を使って育てられた稲がお茶碗一杯分。

お米一粒に七人の神さまがいる、とはよくいったもの。もし来年、自分の作るお米が食べたい人は来年春過ぎからチャレンジしてみては。
(のなかなおみ)
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