昔スーパーで、青ジソが見つからなくて困ったことがある。
野菜売り場のどこを探しても、青ジソが見当たらない。
ウリふたつの「大葉」って野菜はあるんだけど、青ジソとは書かれていない。
そのとき初めて、大葉は青ジソと同じものだってことを知った。

でもなぜ、そんなややこしい書き方をしてるんだろう。普通に「青ジソ」って書けばいいのに……青ジソは通称で、大葉が本来の名前ってことなんだろうか?

青ジソを大葉と呼んでいる理由を、大葉生産量の全国シェア50%を超える東三河(愛知県東部)にある、豊橋温室園芸農業協同組合に聞いた。
「昔、青ジソを販売するにあたって、シソの“芽”と“葉”の区別が必要となり、葉が“大葉”と名付けられ、その呼び方が現在も続いているんです。詳しい経緯は分かりませんが、青ジソの葉を商品化するとき、“大葉”という商品名をつけましょうと、当時の方が考えたようです」

えっ、「大葉」って商品名だったの!? 昔からありそうな名前なのに。


文献によると、シソは日本で最も古くからある野菜の一つとされる。約2500年前(縄文時代)の貝塚や遺跡から、シソの種が見つかっているほど。奈良時代以降に栽培が始められたとされ、普通に食べるだけじゃなく、薬としても重宝されてきた。

また青ジソは、比較的栽培しやすい野菜として、各家庭でも比較的簡単に育てられてきた。しかも一回種をまくと、次の年からはこぼれた種から芽が出て、勝手に生えてくれたりもする。そんなこともあってか、昔は売られていることが少なかった。


そんな青ジソが、世の中に流通し始めたのは1961年ごろ。静岡県で“つま物”を生産している組合が、青ジソの葉を束ねて大阪の市場に出荷したのが始まりらしい。このとき、販売するために考えられた商品名が、「オオバ」だった。1962年には、豊橋でも大葉という名前で出荷を開始。売れ行きが良かったことから、東京市場にも出荷されるようになり、大葉は流通量を増やしていった。

こうして、青ジソは大葉という名前で、世の中に浸透していったってわけ。


ちなみに今では、卸売市場でも青ジソを「おおば」、青ジソ以外のシソを「しそ」として統計をとっているほど。
スーパーで困ることも、減ったんじゃないでしょうか。
(イチカワ)