以前は、豆乳が苦手だった。

実は子どもの頃、友人の家でもらった豆乳があまりに不味く、息を止めて一気に飲み干したところ、「あら、好きなのね~。
もっとどうぞ♪」と何杯もおかわりをもらってしまい、泣く泣く飲んだ経験がある。
以来、「豆乳=不味いけど、カラダに良いモノ」というイメージがずっとあり、近年は豆乳でシチューやグラタンなどの料理は作るものの、それでも「そのまま飲む」のはできるだけ避けてきた。

だが、そんな豆乳のイメージを変えてしまったのが、紀文の豆乳飲料である。
コーヒーや紅茶、バナナ、杏仁豆腐など、様々な味のバリエーションがあり、「豆乳とは思えない美味しさ」「豆乳嫌いだったけど、好きになった」といった絶賛の声がネット上にも多数見られるほど。
何をどうして、全く豆乳臭くなくなるのか。総販売元であるキッコーマン飲料に聞いた。


「紀文の豆乳飲料は、いま21種の味があります。もともと大豆が体に非常に良いことは知られていますが、大豆を手軽にとっていただくために、いろいろな味の豆乳で楽しんでいただきたいと思い、研究を重ねた結果、実はいろんな味と豆乳がマッチすることに気づいたというのが、味の広がりのきっかけです」
ただし、「不味い豆乳+様々な味」では、やっぱり「不味い豆乳飲料」になってしまう。どんな味ともマッチする美味しい豆乳を作ることが、大前提だ。
「そもそもなぜ豆乳に苦手意識を持つ方がいるかというと、大豆自体がもともと不快味や青臭みなどを持っているからです。大豆は非常に高タンパクで動物の重要な栄養源となるため、動物から自分を守るために嫌な味になったと言われているんです」

大切なのは、大豆の嫌な味・臭みを抑えること。これには、「鮮度」が大きくかかわってくるという。

「鮮度というと、青野菜などをイメージしますが、大豆にも同様に鮮度があります。というのも、豆乳にするとき、皮を取り除いた瞬間から劣化が始まり、脂肪分の酸化がどんどん進んでしまうため、風味が悪くなるのです。ですから、大豆が皮をむかれたことに気づかないぐらいのうちに、素早く次の工程に入ることが大切なんですよ」

また、熱をかけて搾る際の繊細な温度管理も重要だ。
「最適温度に保つ技術によって、大豆の良い香りは残し、悪いニオイだけ除去するコントロールが可能になったんです」

ところで、紀文の豆乳飲料には「本当に豆乳?」という声も多い。それほど「豆乳臭さ」がないのだが、これはなぜ?
「お豆腐屋さんの豆乳は、あくまで中間の状態のもので、飲む目的じゃないからですよ。弊社では『豆乳』のために作っている、飲むときにいちばん美味しくなるようにしているから、臭みがないんです」

紀文の調製豆乳は、今年で31周年。
味の広がりとしては、20年前くらいから、豆乳を普段使いできる嗜好品として麦芽コーヒーや紅茶などがスタートし、その後、「黒ゴマ」などの健康素材が登場。
さらに、最近は、豆乳をおやつがわりに用いる人も多いことから、マロン、焼き芋、プリン、杏仁豆腐などのスイーツ系が充実し、今年は「おしるこ豆乳」も発売している。

なんとなく「不味い=カラダに良い」イメージもあるけど、「豆乳としていちばん美味しい状態」を追求した紀文の豆乳飲料は、美味しくても良いんです。
(田幸和歌子)