道を聞くときや、落とし物をして交番に行くと、お巡りさんは大きな紙の地図を広げる。例えばゼンリンの住宅地図を。

そんなとき、目的の場所がスッと見つかれば問題はない。でもたまに、これから宝探しへ出かけるかのように、大きな地図を囲んで、目的の場所を探し続けてることがある。

今だったらパソコンで住宅地図のソフトがあるし、道案内程度ならネット上の地図でもいいはず。そうすれば、検索して一発で場所が分かる。どうして今も、交番では紙の地図が現役バリバリで使われてるんだろう?

警察庁に聞いたところ、交番は各都道府県の警察が管轄してるということで、警視庁(東京都)に、紙の地図を使っている理由を伺った。
「紙の地図であれば、何かあったとき、すぐにパッと開けるでしょう。
事件や災害など緊急時には、特にその必要がありますから」

確かにそっか。道案内のために、地図があるわけじゃない。例えば事件が起こったとき、パソコンで地図を見ようとしたら、時間がかかるし、何人かで見てれば画面が見づらい。災害が起これば、パソコンが立ち上がらないかもしれない。そう考えると、大きな紙の地図の方が実用的だ。

そしてもうひとつ、大きな理由を教えてくれた。

「というかですね、(東京都では)そもそも交番に、パソコンを置いていないんですよ」

えっ! 交番ってパソコンないの? どうして?
「公式的な見解ではないですが、理由として予算的なものもあるでしょうし、他にも事件や事故が起こるなどして交番を不在にするときには、盗難の危険がありますよね。そうした緊急時に、いちいちパソコンをしまって、カギをかけていると時間がかかるので、パソコンを置くのが難しいんです。パソコンを交番に持ち込んでの作業もできません」

そうなんだ。確かに交番って、誰もいないことあるもんなぁ。交番で盗難だなんて、警察としてシャレにならないだろうし。

ちなみに2009年2月から、都内の一部地域の交番で、警察官に「ピーフォン」っていう、警視庁仕様の携帯電話を持たせる試みが始まっている。
その機能は、110番情報を自動受信して地図や詳細が表示されたり、テレビ電話を使って、現場の映像を警視庁内の大型スクリーンに表示できるなど。5人同時通話もできるから、無線を使えない地下やビルでも活躍してるんだとか。

だから別に警視庁がデジタルなものを否定してるわけじゃなくて、慎重に議論した結果、とりあえずパソコンの導入を見送ってるっていう感じだ。

そんなわけで、そもそもパソコンがないから、パソコンで地図を表示するなんてありえない、東京の交番。
ただ、警視庁が交番のハイテク化に力を入れ始めたら、とんでもなく最新鋭の地図システムが導入されるような気もします。
(イチカワ)