3D映像の第二の道。それは従来のメガネを使用するのではなく、裸眼で3Dを表示しようというもの。
ディスプレー関連の各展示会などですでにお披露目されており、製品化も一部されているが、まだ一般にはあまり馴染みがない。そこで、独自の裸眼3Dモニターを2011年度上期に産業市場向けとして発売を予定しているメーカーのナナオに、裸眼3Dの現状の長短所について聞いてみた。

「メガネをかけて3D映像を観るのは煩わしい、裸眼で観たい」というのは多くのユーザーの本音であろう。そのようなニーズに各メーカーが取り組んでおり、様々な裸眼3Dモニターが発表されている。以前、コネタでも「ディスプレイ展で大注目 裸眼で3D映像」で取り上げている。だが、いくつか問題点を抱えているようだ。


従来の裸眼3D方式は左右の目に異なった映像を見せるために、画面にバリアやレンズを設置するのだが、それがために「モワレや縞目の発生」といった画像劣化や、一定の角度で表示画像が反転して見える(逆視)といった現象が起こってしまうという。

さらに、3Dの所以たる奥行き方向(立体)の再現力も劣化する。3Dモニターは画面の横方向の解像度を「右目用の画像」と「左目用の画像」に振り分けて表示するのだが、その結果、フルHD(横1920画素)でも実際には横960画素以下の映像しか表示できないからだ。これは裸眼3D式だけでなく、メガネ式にも当てはまる。

一方、Directional Backlight方式を採用したナナオの『DuraVision FDF2301-3D』では、「モワレ、縞目、逆視」といった画像劣化は発生しない。また、同方式は、裸眼3D画像を構成する視差画像(右目用の表示と左目用の表示)を同じ画素から120分の1秒の時間差で表示することで3D映像を映し出す。
なので、
「従来型の裸眼3D表示方式やメガネ式と比較して、同じ解像度の液晶パネルを使用した場合、水平画素ピッチを2倍以上高精細にできます」
左目用/右目用の各画像による立体表示では、左右画像の水平位置のズレ幅が奥行きとなるため、水平画素ピッチが精細であるほど、奥行き方向の再現力が高い映像になるのだ。

Directional Backlight方式は、これまでの3D方式の問題点を見事クリアーしているわけだが、他方、問題点はないのだろうか。
「用途が異なるため比較が難しいですが、以下の用途ではメガネ式と比較して性能的に劣ります」
・多人数で観られない
「複数人でモニターを観る場合、視野角の狭さによって正しく立体を認識できにくくなる(斜めから画面を観ると2次元に見えます)
・設置環境が限られる
「奥行き方向に筺体が大きいため設置スペースが限られる場合がある(壁掛けなどには難しい)

今回の新製品はあくまで産業用。一般向け製品への見通しについて、
「テレビは、基本的に複数人で長時間映像を観られることがニーズ。しかし、Directional Backlight方式はそれにフィットしないと考えています。当社としては、別の3D方式での一般向け製品開発について、現在検討中です」とのこと。


みんなで裸眼で観られるキレイな3D映像を期待しています!
(羽石竜示)