そして、出会った。宮城県の農業・平塚静隆さんが開発した新品種のお米がスゴいのだ。品種名は決まっていない。しかし、そんなことは問題ではない。なんと、冷めると甘さが増していくというのだ。
なんだ、そりゃ! そんなことってあるのか? このお米の詳細について、平塚さんに伺ってみた。
「今のコンビニに売っているおにぎりは、冷めても美味しく食べられるように作ってはあります。でも表示を見ると、美味しさを保つために色々混ぜているんですね。米そのもので、美味しいお米を食べてほしいと思ったのが、開発のきっかけです」
お米は普通、炊いたばかりの状態に比べて冷めると美味しさは落ちていく。だからこそ、美味しさが維持するものを作ろうと思い立ったのが2001年。交配などの工程を含め、10年の月日をもかけて新品種のお米を作りあげた。
しかし出来上がったのは、実は失敗作だった。意図するものとは違うものを生み出してしまった……。
「想像していたより、甘みが強くなったんです。炊きたてよりも、時間を置いた方が甘くなって美味しくなってしまったんです」
そして誕生した、“冷めると美味しくなるお米”。
でもどこがどうなって、こんなお米が出来上がる?
「品種の詳しいことは申し上げられませんが、甘みのある品種とそれを強めると思われる品種を掛け合わせてみたんです。それが、どうして冷めると甘くなるのかは、私にもわかりません」
またこのお米、何も“おにぎり専用”というわけじゃない。だって、普通にしててもお米は冷めるから。
「普通のご家庭で、温かいご飯を食べているおウチは皆無なんですね。よそっているうちに冷めてしまいますし、炊き立てをよそっても食べ終わるまでに冷めてしまいます。このお米では、最後の一粒まで美味しいご飯を目指しました」(平塚さん)
正直言って半信半疑。自分で体験してみないと、心から信用できない。だからこそ、お米を送っていただきました。
まず、炊飯器からよそったご飯は、通常と何ら変わり映えはしない。そして、ひと口目を口に。……普通じゃん。と思いきや、食べていくうちに段々と甘みを増していくお米たち。“甘み”といっても、砂糖をまぶしてるような甘みじゃなく、噛むと米からあふれ出てくる“甘み”。それが、食べ進めていくにつれて(冷めていくにつれて)倍増していく。
もしかしたら、下手にオカズのお供にしない方がいいくらい。それよりも、まずはお米だけで試していただきたい品種なんです。
また、おにぎりにしていただいても素晴らしい。握ってからわざと2時間置き、そこから食べてみると、米はひとつも死んでない。「おいしいお米は、おにぎりにして時間を置いても旨い」なんてよく言うが、このお米はそのシチュエーションこそが本領なのだ。
このお米、是非皆さんに体験していただきたいのだが店頭で購入できるようになるのはいつ?
「今年の秋に栽培希望者をホームページで募り、その人数分の種を作ろうと思っています。
ご飯が食べ終わるまでに要する数分の間、甘みが増していくマジカルなお米。首を長くして、お待ちいただきたい。
(寺西ジャジューカ)