恵比寿にある東京写真美術館で昨年末から行われている展示「3Dヴィジョンズ」。任天堂の新型ゲーム機「3DS」もそうですが、おなじみ3D映画は多くの映画館に定着し、テレビも3D映像に対応したものが増えてきました。もうどこかで一度は3D映像体験をされた方が多いんじゃないかな、と思います。
そんなハイテクな立体映像技術も、およそ170年前の「ステレオ写真」から歴史が始まっています。この展示ではそんな歴史の起源から、現在に至る発展を、貸し出してくれる立体視器具を持ちながら会場を歩き、当時の実物の写真を立体視しながら追っていけるという物でした。
ヨーロッパの人たちの間で、写真が立体的に見えるステレオ写真が広まると、次々に彼らは色々な物を撮影していったようです。それは風景だとか、建物だとか、人物の写る記念写真もステレオ写真で仕上げた物がすぐに登場します。かなり早い時期にエジプトの遺跡などの世界の名所や、完成した立派な戦艦の迫力を伝える写真が登場しているのには、さすが西洋だな……と感じました。また、画家がモデルの女性にいたずらをするようなシーンを撮ったいやらしいカードもそれなりにたくさん出ていたみたいです。そんなに立体視したいか!
見る方の装置も年々発展を遂げて、初期にはオーケストラの指揮者が使う楽譜立てのようなスタンドだったものが、双眼鏡のように小型化していくのはなかなかエキサイティングです。さらにそれだけには留まらず、「見る時は同時に二人以上楽しめない」という点を改善しようとしたメリーゴーランドのような劇場装置「カイザーパノラマ」も壮絶の一言。大きな円柱型の装置の周りに、イスとりゲームのように20人ほどが円形に囲み座って柱の中を覗きます。
さらに戦後は大衆文化に浸透した赤青のセロハンを使った雑誌のふろくや、30年ほど前に作られた「ジョーズ」などの3D映画についての展示も、疲れない程度に見ていくことが出来ます。
また、歴史を追うだけでなく、現代の国内外のアーティストや研究者による最近の作品や研究報告の数々が展示されています。立体視を使った新しい表現や、googleの「ストリートビュー」システムなんかが面白いと思う人は見ていて飽きない物ばかりだと思います。
観覧料は一般500円・学生400円と手軽。2月13日までと展示終了が迫っていますので、気になる方は足を運んでみてはいかがでしょうか。(香山哲)