高校時代、休み時間になると友人と集まりハマっていたトランプゲームがある。秋田のお土産物として最近話題になっているという商品が、遠い日の記憶を鮮やかによみがえらせてくれた。
それは「大富豪研究所」が製作している秋田限定の「なまはげ印の大富豪専用トランプ」(価格1,050円)だ。

秋田名物が盛り込まれた大富豪専用トランプは、昨年9月の発売後5カ月で1,000個以上を売り上げた。現在、秋田県内の土産物店や道の駅など約25店舗で取り扱いがあり、購入者は秋田県民と観光客が半々の割合だという。なぜご当地トランプというだけではなく、「大富豪専用」のトランプを作ろうと思ったのか。同社の千葉さんに話を聞いた。
「弊社は2006年にアメリカ産のボードゲーム『モノポリー』の秋田県版を企画制作しました。『モノポリー』は1920年代世界慌時の中、失業したアメリカの若者が『ゲームの中では金持ちになろう』と考案したゲームです。日本は不景気ですが、新しいゲームを考案しなくても『日本には“大富豪”(地域によって名称は“大貧民”)がある』と思ったのがきっかけです」

同トランプは、ハートに「比内地鶏」、ダイヤが「秋田米」、スペードが「秋田杉」、クラブが「秋田蕗(フキ)」、絵札に「なまはげ」や「秋田犬」などがデザインされ、秋田の魅力が随所に散りばめられている。ゲーム時に場のカードを流せる8は通常「8切り」と呼ばれるが、同トランプでは「8キリタンポ」ということで、8にキリタンポを描くなどユーモアも忘れない。カードの表面には、言われるまでは誰も気づかないという遊び心「なまはげ」の隠し絵もあしらった。

何度もデザイン案を出しては用紙に出力してカッターで切り取り、実際にゲームを行って検証するという作業を何度も繰り返し、完成に約一年を費やしたという。「見た目はいいデザインだと思っても、実際にゲームするとトランプとしての機能性に支障が出たりするので、『見た目の楽しさ』と『トランプとしての機能』を両立させることに苦労しました」

秋田県では実際に同トランプを使って大富豪公式ゲームを6度開催。
「月1回ペースでゲームを開催していますが、直接コミュニケーションを取ることはオンラインゲームとは違う楽しさがある。参加者のほとんどが20代~40代の大人で、皆さん初対面なのに童心に帰って大騒ぎしています。ゲームをすることで人とのコミュニケーションを取ることの楽しさを伝えていければ」。サイズや価格も手頃な上に「秋田に行ってきました」というご当地感ももちろんあるが、トランプを持ち帰り一緒にゲームをすることで旅の思い出を再び共有できるのも魅力のひとつと言えるだろう。
(山下敦子)
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