「『遊ぼう』っていうと『遊ぼう』っていう。『ばか』っていうと『ばか』っていう。『もう遊ばない』っていうと『遊ばない』っていう。そうして、あとでさみしくなって、『ごめんね』っていうと『ごめんね』っていう。こだまでしょうか、いいえ、だれでも」
この後、男性の声で「やさしく話しかければ、やさしく相手も答えてくれる」という語りが入る……という構成で、日本が今、こういう状況だけに改めて人と人のつながりを考えさせられるCMであった。
暗記するくらい何度も見たけれど、わかりやすい言葉使いと絶妙なリズム感で、最初はプロのコピーライターが書いたものだと信じ込んでいた私。しかし、画面をよく見ると明治生まれの詩人、金子みすゞの作ということでビックリ! この時代に、口語体でこんな新鮮な感覚の詩を書く人がいたとは……。
実は、このCMの影響でこの「こだまでしょうか」という詩がおさめられた金子みすゞ童謡集『わたしと小鳥とすずと』(JULA出版局)という本が品切れになるほど売れているらしい。
金子みすゞは1903(明治36)年4月生まれ。西條八十に才能を認められ、若き童謡詩人たちの憧れの星となる。23歳で結婚し、一人娘をもうけるが、夫から詩作を禁じられ、辛い生活ののち離婚。娘を引き離そうとする夫に抗い、1930(昭和5)年3月10日、26歳で短い生涯を終えたという。