もうご存知の方も多いだろう。「アンペアダウン」とは、家庭の契約電力のアンペア数を下げること。あまり意識していないかもしれないが、50A、30Aなど家庭ごとに電力会社との契約アンペア数、つまり家庭内で一度に使える電気使用量の上限が決まっている(注意:沖縄、四国、中国、関西は電器料金形体が異なるため、アンペアの設定がありません)。この上限を超えると“ブレーカーが落ちる”ことになるのだが、もしかしたら通常消費するよりもずっと大きなアンペア数の、過剰な契約になってしまっている可能性がある。契約アンペアによって電気代の基本料金が決まるので、これではもったいないし、何より、上限を決めることで電気の使い過ぎを知ることもできる。節電の手始めとして、まずは契約アンペアと消費の実態をチェックしてみる価値はありそうだ。
さっそく、我が家の契約と消費のバランスをチェック。ブレーカーを見ると、「50A」の文字。賃貸の一戸建て住宅で、恥ずかしながら契約アンペアはチェックしたことがなかったのだが、案外大きな数字だ。ちなみにこの家に暮らして1年半、一度もブレーカーが落ちた試しがない。
共働きで2人暮らしの我が家。冬はガスファンヒーターを使用するので、真夏の夕飯の支度中が最大の消費電力となりそうだ。照明、冷蔵庫、炊飯器、電子レンジ、エアコンの同時使用で、37.5A。エアコンを扇風機に変えれば28.5A、電子レンジと炊飯器の使用時間をずらせば26A程度まで抑えることができそうだ。40Aが安全だが、ここは思い切って30Aへのダウンにチャレンジすることに決定。さっそく東京電力のホームページから、アンペアダウンの申し込みをフォームから送付、2日後に作業をお願いすることにした。ちなみに契約変更作業は無料とのことだ。
当日。希望時刻の1時間ほど前に電話があり、時間どおりに東京電力の方がご来宅。「5分ほど停電しますので」とお声がけいただいた後、ブレーカーのプラグの差し替えなど、作業はあっという間に終了した。作業員の方に聞くと、その日(5月下旬)は、この地域だけで42軒のアンペアダウン作業に回るのだとか。
さて、こうしてめでたく30A契約になった我が家。果たしてどの程度まで電気が使えるのか、その日の夕飯調理時に試してみることに。実験のため、そんなに暑くはなかったがリビングのエアコンをオン、炊飯器でご飯を炊きながら電子レンジを使ってみた。しばらく様子を見たが、ブレーカーの落ちる様子はない。さらに、テレビとノートPC、シーリングファンもオン、照明も強さをマックスにしてみたが、やはり変化なし。移動して寝室のエアコンと照明もオン。これでもブレーカーが落ちる様子はない。そしてここで、急に怖じ気づく。今ブレーカーが落ちたら真っ暗じゃないか……。
翌日、朝から家中の照明をオンにし、リビングと寝室のエアコン、テレビとノートPCをオン、電子レンジのスタートボタンを押し、あと炊飯器をオンにすれば昨夜の状態と同じ状態に。ただ、ご飯は炊く予定がないので、朝らしくドライヤーをオン。これでもまだいける。最後の手だてとして、チェック表で「10A」となっているアイロンを「高温」でオン。ここでようやく、「ガタン」と家中が静かに。30Aを超えたようだ。やっぱり朝にして良かったと思いながら電気を復旧させ、実験は終了した。
結局、エアコン2台(冷房23℃)、電子レンジ、テレビ、ノートPC、照明2部屋、シーリングファン、ドライヤー、アイロンを同時使用してアウトとなったわけだが、こんなに同時に電気を使うことなんてまずない、というレベルであることに驚いた。ひょっとしたら、友達が集まった真夏の夜、ホットプレートで焼き肉パーティなんて場面では厳しいかもしれないが、そんなことは年に1度あるかないか。もちろん、家電の種類や使い方、エアコンの設定温度などにもよると思うので一概には言えないが、エアコンを2部屋以上で同時に使うことのない我が家の場合、30Aで十分すぎるくらいだったのだろう。これまでの50Aという契約がいかに無駄だったかが痛いほど分かる結果となった。
その後1週間暮らしてみたが、当然ブレーカーが落ちる様子もない。今回のアンペアダウンにより、電気代の基本料金は1,365円(50A)から819円(30A)と、546円節約になった(東京電力の場合)し、家中の電気を調べたため、改めて無駄を見直すことができた。節電15%を目指す足がかりとして、とりあえずは満足できる結果だ。20Aまで挑戦してみればよかったかな、という気持ちだけが少し残ったが、これは今後への課題としておこう。
アンペアダウンは、個人の節約や意識改革になるだけじゃなく、多くの家庭が行うことによって、ピーク電力を下げることができる。みんなが契約を見直せば、ひょっとしたら稼働が不要となる発電所だって出てくるかもしれないのだ。個人の力は小さいが、認知がもっと広がることにより、夏の電力危機を乗り切るための大きな力となることは間違いないだろう。
とっても簡単だったアンペアダウン。節電、そしてエネルギーについて考える第一歩として、あなたの家庭でもぜひチャレンジしてみてください。
(池田美砂子)