ところで、この第二子が産まれた、神奈川県鎌倉市の産院「ティアラ鎌倉」の助産師さんから、興味深い話を聞いた。曰く、「赤ちゃんには“都合耳”が備わっているんですよ」。“都合耳”とは初耳だ。いったい、なんのことですか?
「赤ちゃんは、お腹の中にいる頃から、いろんな音を聞いています。お母さんが好きな音、たとえば好きな歌や、家族の声なんかは、赤ちゃんにとっても好きな音なんです。反対に、お母さんが嫌いな音は、赤ちゃんも嫌いに感じます」
そして、赤ちゃんは、好きな音に対してはどんな大音量でも喜んで聞き、本当に嫌いな音には泣いてしまうものの、騒音などには自然と耳をふさいで対応するらしい。これを赤ちゃんの“都合耳”と呼ぶのだとか。
ごめんよ、第二子。お父さんは、いけないお父さんだ。まだこの世に生を受けたばかりのキミを、お父さんは仕事の実験台にしようとしている。然るべきところにこの記事を見られたら、お父さん、職を失うかもしれない。でも、やるしかない。ていうか、やってみたいんだ。ごめん。ごめんよ。
と、いうわけで、わが第二子に協力してもらって(妻のシャープな視線を痛いほど感じながら)実験開始。まず、騒音編。筆者と第二子が寝ているところに、妻に掃除機をかけてもらう。
次は、テレビの音量編。筆者の大好きなプロ野球中継を、やや大きめの音で第二子と見る。野球に一切興味の無い妻から、「うるさい!」と今度は筆者が怒鳴られる。OH! しかし! 第二子は相変わらずスヤスヤ寝ているではないか。
ここでちょっと疑問を覚える。これ、実のところ音に対して鈍感ってだけじゃないの? 騒音に自然と耳をふさぐっていっても、その様が目に見えるわけじゃなし。掃除機の音も、テレビの音も、鈍感だから何も感じないだけなのでは?
しかし、ぐずって泣いているときに、赤ちゃんグッズで優しい音色を流すと、スーッと泣き止んだりする。やはり、好きな音はあるようだ。
ある朝。早く目覚めた2歳の長女が、大音量で何やら歌っている。「うるさいなあ」と筆者。「赤ちゃん起きちゃうから、歌うのやめよ」と妻。しかし、第二子は起きない。それどころか、穏やかな表情で眠っている。お腹の中にいるときから聞いてきたお姉ちゃんの歌声を、さも心地良く感じているかのように。
洗濯機、チャイム、目覚まし時計などなど、生活の中で起きる騒音では、たしかにほとんど目を覚ますことはない。家族の声、妻の好きな曲などには、嬉しそうな反応も見せる。これが、“都合耳”というものなのかもしれない。
先に登場した助産師さんの話の続き。
(木村吉貴/studio woofoo)