最近は日本でもさまざまな料理に使われるトウガラシ。中南米原産で、いまや世界各地に種が広がり、種類は3,000以上もあるといわれる。


とくに辛みの強いものとしては、メキシコのハバネロやインドのブート・ジョロキアが有名だが、日本にも辛いトウガラシはある。

先日、長野県で発見したトウガラシ「ぼたんこしょう」もそのひとつ。トウガラシはコショウと呼ばれることも多いが、英語ならトウガラシもコショウも「ペッパー」(pepper)だ。長野県中野市の伝統野菜だというぼたんこしょう。大きめのピーマンといったマイルドな見た目に反して、実は相当辛い。

ぼたんこしょうの保存と普及を目的に活動している「ぼたんこしょう保存会」によれば、栽培歴は70年近くにもなるそうで、
「北信州の中野市(旧豊田村)から斑尾山あたりで生まれた野菜です」
一般的にトウガラシは暖かい気候で育つものが多いが、ぼたんこしょうは例外。
「標高の低いところで栽培すると辛くならないので、標高1,000メートルほどの比較的高い場所で栽培しています」
果実の先にある深い溝が、牡丹の花のように見えるのが名前の由来。新潟県の「かぐらなんばん」というトウガラシにもよく似ており、兄弟品種ではないかとのこと。

ぼたんこしょうを使った料理は、野菜のふりかけ「やたら」とナスと一緒に味噌と砂糖で味付けした「あぶらみそ」という昔ながらの郷土料理が2大定番だが、
「グリーンカレーに入れたり、ピザやペペロンチーノに使ってもおいしいですよ」
個人的にはシンプルにグリルして、おつまみ感覚でチビチビかじるのも好みかも。

ピーマンと同じく夏野菜なので、旬は夏。
「標高の高い所で日光をたくさん受けると辛いだけでなく旨味も増します」
いびつな形のものほど辛いのだとか。

ぼたんこしょうは道の駅「ふるさと豊田」や「まだらおの湯」にて同保存会が販売中。
ほかに地元の野菜直売所などでも見かけることがある。1袋に4~5個入って100円前後と値段も安い。また、「まだらおの湯」では定期的に試食会等のイベントも開催しているそうだ。

ちなみに隣の飯山市あたりでは、ぼたんこしょうと並んで「ばななこしょう」なるものも見かける。こちらはとくに伝統野菜というわけではないが、最近栽培が増えており、直売所やスーパーの地元野菜コーナーに並んでいることも。バナナに似た黄色い形がなんとなくかわいらしいが、辛さはぼたんこしょうよりさらに上。扱いにも要注意だ。

信州といえば、蕎麦やおやきなど素朴なグルメが有名だが、こんな刺激的名産もある。機会があればぜひお試しを。
(古屋江美子)
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