というわけで、秋の夜長に全巻読破したい長寿漫画の今、をスポーツ漫画のジャンルからレポートします。
■ドカベン
1972年に「週刊チャンピオン」で連載開始。野球文化を支えてきた水島漫画の代名詞『ドカベン』。
「続いてるの知ってるよ。『プロ野球篇』でしょ」という方いませんか? 今連載してるのは『スーパースターズ篇』です。東北楽天イーグルスが誕生する契機となった2004年の「プロ野球再編問題」に先んじること1年、パ・リーグに新たに2つのチーム(山田ら明訓高校メンバー中心の「東京スーパースターズ」と、犬飼三兄弟や不知火ら高校時代からのライバルを集めた「四国アイアンドックス」)を誕生させ、ますます絶好調の水島ワールド。この辺の先見の明には脱帽せざるをえません。
現在の最新刊は41巻(『ドカベン』『大甲子園』『プロ野球篇』合わせると167巻目!)ちなみに今チャンピオンで連載中のvs西武ライオンズ戦はなんとまだ2010年シーズン。最近オフの話題に時間をかけすぎたせいかだいぶ遅れをとっています。というのも、プロ野球入団にともない現実世界の歩みとリンクしだしたドカベン世界。
ここで明訓五人衆の恋愛事情をおさらいしていきましょう。
岩鬼:紆余曲折あった末、ついに永遠の恋人「夏子はん」と結婚。(ちなみに夏子はんはバツイチ子連れ)
殿馬:四国アイアンドックスのマドンナ選手と結婚。おたがい遠征ばかりなので対戦する時だけの別居婚。
里中:山田太郎の妹・サチ子と遂に結婚!「将来、里中くんのお嫁さんになるんだもん」が口癖だったサッちゃん。“夢はいつか叶う”という少年漫画にもっとも重要なテーマをここで表現してくれた水島先生がニクいです。(このあたりの恋愛模様を確認したい方はスーパースターズ篇18巻をご覧ください。里中&サチ子の結婚式は29巻。徳川監督のスピーチが泣けます)
微笑:つい最近広島へ電撃トレード(これにはホントにビックリ!) 恋愛どころの話じゃなく引退の危機に。
そして肝心の山田太郎は?というと、まだ独身で相変わらずおじいさんと二人、保土ヶ谷のオンボロ長屋で暮らしています。あるラジオ番組で水島先生が語ったところによると、2008年時点で山田太郎は童貞! ここに偉大な魔法使いがいました。
ちなみに山田太郎のこれまでの通算成績は2000本安打と500本塁打をすでに達成済み。王貞治のホームラン記録と張本勲の通算安打記録の両方を抜いてしまう勢い。見事な魔法使いっぷりです。
<今後の展開のチェックポイント!>
山田太郎の結婚、そしてあの長屋から引っ越す時が来るのか。水島先生がメジャーに興味がないのは有名ですが、五輪予選の描写はこれまでもあったので、WBC開催の暁には『ドカベンWBC篇』を描いてほしいです。
■キャプテン翼
1981年に「週刊少年ジャンプ」で連載スタートした『キャプテン翼』。以降、『ワールドユース篇』→『ROAD TO 2002』→『GOLDEN-23』→『海外激闘編』と続く、言わずと知れた世界的サッカー漫画です。
主要メンバーの今の所属チームはというと…
大空翼:FCバルセロナ(スペイン)/若林源三:ハンブルガーSV(ドイツ)/日向小次郎:ユベントス(イタリア)に入団後、セリエCのレッジアーナにレンタル移籍/岬太郎:ジュビロ磐田(ちなみに我らが等身大ヒーロー石崎くんも同じくジュビロ所属です)
これらのチームに入団したのが10年近く前のこと。当時は「バルサはやり過ぎでしょー。高橋先生あいかわらずの妄想っぷりだな」と笑ったものですが、長友佑都が現実世界でインテルに入団した今となってはさすが!とも言うべき高橋予言の凄まじさです。
最近の注目トピックスとしては
・せっかくイタリアに渡ったのに左半身に鎖を巻いて左右の筋力バランスを矯正するという『巨人の星』ばりの前時代的トレーニングに励む日向小次郎
・硬派で周囲の人間を傷つけてしまうほど血気盛んだったあの日向小次郎が、彼女(女子ソフトボールの日本代表選手)とメールでイチャイチャ
・力任せの強引なプレーでは海外で通用しない。と「直角フェイント」という小技を編み出す日向小次郎
と、日向の変わりっぷりばかりが気になります。
他には、若島津がFWに転向(空手技で蹴りまくってます)、立花兄弟が選手生命をかけた「ファイナル・スカイラブハリケーン」を敢行してもう二度とあの技が見れない!?といったところも押さえておきたいところ。あと、最新の必殺シュートは3段オーバーヘッドキック! 高橋先生の想像力は限界知らずです。
<今後の展開のチェックポイント!>
現在、連載は一時中断(のはず)していますが、これからいよいよ五輪本大会(マドリード五輪を目指した戦いがここ10年ほどずーっと続いていました)なのでそこはきっと描かれるはず。ちなみに現在、翼くんとの子どもを妊娠中の早苗ちゃん(あねご)は五輪大会中に出産すると予想。
■はじめの一歩
1989年から「週刊少年マガジン」で連載中。いじめられっ子・幕之内一歩が「強いってなんだろう?」という疑問に答えを見つけるべくはじめたボクシングで成長していく物語『はじめの一歩』。
そんな一歩も30巻で日本王座を獲得し、これからは世界篇か?と思ったのも遠い昔。現在最新刊が97巻。来年には連載1000回を達成しそうな勢いでまだまだ絶賛日本チャンピオン中。つい先日8回目の防衛に成功したところです(戦績24戦23勝23KO1敗)。
思えば私が「中学になったらジャンプじゃなくてマガジンだよね」と大人ぶって買った漫画が『はじめの一歩』でした。あれからもう20余年。巻数が増える一方のコミックスに「これいつ片付くのよっ!」と毎度毎度母親に怒られています。
現在、連載においては一歩の後輩・板垣学の成長が中心になりがち。ほかの鴨川ジムの面々はというと、鷹村守は世界タイトル二階級制覇から次になかなか進めず、青木村の2人は変わらず日本ランカー10位以内をウロウロ、とちょっと停滞気味(どちらも凄いことなんですが)。そう言えば一歩と久美ちゃんの恋模様も相変わらず手もつなげない状態が続いています。
じゃあ97巻もかけて何を描いているのか? 『はじめの一歩』の挑戦的なところでもあるのですが、巻を追うごとに描写がミクロの世界に進んでしまっているんです。表面的な打撃の応酬から筋肉の繊維・骨一本一本の描写に移行し、最近では細胞の動きや赤血球の流れるスピード、といった具合に年々表現方法が緻密になる森川ジョージ先生。「1秒間」の密度が増すためにストーリー展開がどうしても遅くなってしまいます。この辺は我が家の本棚的にももう少し改善していただきたいところです。
<今後の展開のチェックポイント!>
・板垣はジム移籍するのか(移籍フラグは結構立ってるんですが)
・鷹村の網膜剥離疑惑はどうなった?(これもフラグ立ちまくってたんですがもうなかったことに?)
・一歩が世界挑戦するのはいつか。そして宮田一郎との対戦は実現するのか(スパーリングでの最終回、っていうオチだけはカンベンしてください)
■DEAR BOYS
1989年に「月刊少年マガジン」で連載スタートした『DEAR BOYS』。
そして今、連載20年を越えてようやく、ようやく因縁の天童寺高校とぶつかります。舞台はインターハイ決勝! これ以上の対決はもうありません。いよいよクライマックス。さあ、試合終了まであと……あと何年? というのも劇中での経過年は連載開始時からまだ1年もたってないんです。ひとつの得点、ひとつのプレーを丁寧に描く濃密っぷりは他の漫画の追随を許しません。
ちなみに、私が高校に入学した90年代中盤はNBA人気や『スラムダンク』の影響もあって空前のバスケブームでした。恥ずかしながら自分もスラムダンクに憧れて高校ではバスケ部に入ったのですが、ビックリしたのが「DEAR BOYS派」と「スラムダンク派」の派閥争いがあったこと。思いのほかDEAR BOYS派が多く、肩身の狭い思いをしたのも懐かしい思い出です。あの頃一緒に高校生活を歩んでいた瑞穂高校男バスの5人はまだ高校生なんだよなぁ…何か変な感じです。
スタート時に主人公・哀川を高校No.1プレイヤーに設定してしまったために、成長(変化)を哀川個人の精神面と仲間に求めたこの作品。
<今後の展開のチェックポイント!>
天童寺戦がコミックス何巻分を費やすのか、というのはやっぱり見所。さすがにそこが終わったら終了だと思うんだけど、まさかウィンターカップ篇には行きませんよね? あと、テストの採点や料理シーンや時折見せるポニーテール氷室がもっと見たいぞ、八神先生!
こうして各長寿漫画を横断して見ていくと、続けていくことの秘訣は「変化」にあり!ということがわかります。マンネリって言われる前(後の場合もありますが)に変える。それはドカベンやキャプ翼のように境遇(チーム、結婚)の変化もあれば、はじめの一歩やDEAR BOYSのように表現方法の変化だったりもします。それはもう作家陣や編集者の絶え間ない創意工夫があってのこと。やっぱ継続って努力だなーとしみじみ痛感したところで、はじめの一歩・鴨川会長の次の名言を借りて締めたいと思います。
「努力した者が全て報われるとは限らん。しかし! 成功した者は皆すべからく努力しておる!!」
(オグマナオト)