そして、今度は自動車そのもののリサイクル。NPO法人「山形県自動車公益センター」は平成20年より開発室を設立し、「自動車リサイクル・再資源化等研究開発」に取り組んでいる。
まぁ正直、“自動車パーツのリサイクル”という試みに関しては、それほど目新しさを感じない。例えばエンジンのリサイクルとか、何度か耳にしたことがあるし。
だが同法人では、活用の難しいパーツでのリサイクルにも取り組んでいるそうなのだ。
では、リサイクルが難しいパーツってどこなのだろう?
「サイドガラス、エアバッグ、シートベルト、ハンドルなどがあります」(山形県自動車公益センター・担当者)
リサイクルが困難な理由は、いくつかある。「これまで再利用の事例がなかった」、「抽出工程がなかった」、「素材特性で加工しにくくて染色した事例もなく、手探りの作業であった」などなど。要するに、前例のない試みに取り組み始めているわけだ。
ところで、それらはどのように生まれ変わったのか?
「コンクリート製品(車止め、ブロック)やバッグ類、スツールとして商品化されております」(担当者)
同法人ではこれらだけでなく、様々なリサイクル商品の開発を今までに成し遂げている。
・エアバックを素材とした製品……バッグ、帽子
・シートベルトを素材とした製品……バッグ
・ハンドル、シートベルト、エアバッグ等を素材とした製品……スツール
・ガラスを利用した製品……車止め、ブロック(コンクリート製品)
そんな今までのリサイクル商品の中で、特に人気だったのは?
「エコバッグ(840円)、ビジネスバッグ(8,400円)、帽子類(2,650~3,660円)などがあります」(担当者)
そして、以下が現在開発中の試作品である。
・エアバッグを素材とした製品……たんか(搬送用品)、防災ずきん
・シートベルトを素材とした製品……はしご
・ハンドルを利用した製品……バッグハンガー
・シートを利用した製品……室内椅子
今後、アルミ材やシャフト類、センサーなどの室内装備品のリサイクルも考えているとの事。それ以外にも、再利用しにくかったモーターや廃油などは農業用ハウスにて活用する(寒冷地での暖房の燃料や散水用機材に充てる)。
ますます、再利用できる箇所は増えていくのだ。
では、至極単純な質問もさせていただきたい。自動車パーツのリサイクル率が上がると、どのような効果があるのか?
その回答として、最も大きく挙げられたのが「ガラスやエアバッグ等のシュレッダーダスト」の問題である。ご存じの通り、シュレッダーダストとして埋め立て処理するスペース、もう余裕がない状況にきているのだ。また、シュレッダーダストをサーマルリサイクル(焼却する時の熱エネルギーを回収)する際、炉にガラスが付着することで寿命を縮めてしまうという課題もある。シュレッダー業者に関して言うと、ガラスの粉砕時に機械の損傷が激しくなってしまう。
しかし、ガラスやエアバッグ等を取り外して分別することで、上記の問題は解決されるのだ。
それだけでなく、雇用問題についても良い影響を及ぼす。
「自動車のパーツを利活用することで、省資源と環境型資源を推進することができ、なおかつ異分野異業種との連携による作業も生まれます。また、細かく取り外し・分別作業を行うためには手ばらしも必要不可欠です。これらの状況によって雇用も生まれ、山形県内の活性化につながると考えております」(担当者)
ちなみに同法人で製品化されたリサイクル商品は、山自販リサイクルセンター各ショップ、もしくは山形県内にある全メーカーのディーラー本社ショールームで販売されているとの事。
「風が吹けば、桶屋が儲かる」じゃないけど、同法人がこのリサイクル活動で狙っているのは、環境問題のみに留まらないようです。
(寺西ジャジューカ)