お正月は、腹いっぱい食べた。おせちとお雑煮と、そしてカニ。
特に「今季は、値が高い」と言われていたカニは、ここぞとばかりに。美味しかった! そして、食べにくかった!! 「美味しいのに食べづらい」。カニを表現する文言といったら、コレか?(もっと、あるだろう)

ただ、食べづらさでは負けてない。北海道苫小牧市の菓子メーカー「三星」は、日本一食べづらいお菓子『よいとまけ』(復刻版 切れていないタイプ)を5万個限定で1月9日より発売している。
ちなみに、この『よいとまけ』とはロールカステラに北海道の果実ハスカップジャムをたっぷり使った銘菓。丸太をイメージしたフォルム(約16cm)が特徴的で、昭和28年発売とその歴史は非常に長い。
商品名は、労働者が丸太を持ち上げる際に出すかけ声から取っているという。

だが気になるのは、そのキャッチフレーズではないだろうか。「日本一食べづらいお菓子」って……。具体的に、どう食べづらいのか?
「表面にたっぷりとコーティングされたハスカップジャムの粘りで、触ると手がベタベタしてしまうんです。丸太の形をしているので、お客さんに出す場合などは包丁で切らなければならないのですが、ベタベタを防ぐためにオブラートを巻いているのでカットしづらく、切り口がボソボソになってしまいます」(同社・担当者)

当然、「あらかじめ切ってあったらいいのに!」という声が同社に寄せられるようになる。そして技術的な問題を克服した2009年、ようやく7等分にカットした現行タイプの発売がスタート! 一方、“切れてないタイプ”については、2010年に発売中止となっている。

これでめでたし、めでたし……と行かないから、世の中は不思議だ。
「“切れてないタイプ”の発売が中止となってからの2年間、特に年配の方々から『あの食べづらさが懐かしい』といったお声を、お手紙やメール等でいただくようになりました」(担当者)
数にすると数十件程度だったが、その一つ一つに込められた熱い想いが凄まじかった。「新しいものになってしまい、非常にガッカリ……」、「前の方が良かったのに!」と、それぞれが熱烈な復刻リクエストだったのだ。同社もその熱き想いに応え、「復刻版 切れていないタイプ」の発売に踏み切ったという。

ただ、チョット気にならないか? どんなに食べづらいのかが……。そこで、私も実際に取り寄せてみました! その食べづらさと、その魅力を体験してみようじゃないか。


まず箱から取り出すと、いきなり太い。このド迫力! まるで、カットしてない沢庵みたいな。これをオブラートの上から握ると、直接触っていないにもかかわらず、既に指の数ヵ所がベトついている。これは、楽しみだ(食べづらさが)。
早速、包丁でカットします。あらー、オブラートが刃に引っ付いて『よいとまけ』の中に巻き込まれていく。
自ずと、カット面はボソボソに。綺麗じゃない。中学生の調理実習じゃないんだから……。このオブラートを剥がさなきゃいけないから、結局は直接触って手がベッタベタに。やっちまった!
こうした困難を乗り越えて口にした『よいとまけ』は、悔しいかな、凄く美味しい。甘味と酸っぱさと微妙な苦味が絶妙に組み合わさって、至極フルーティなのだ。
これが、きっとハスカップの魅力に違いない。丸太の味ではありませんでした。

そんな『よいとまけ』は、同社の直営店(北海道)と新千歳空港2階にある「苫小牧観光協会」、ならびに楽天ショップにて販売されている。価格は、1本550円(税込み)から。

ところでこの「復刻版 切れていないタイプ」、限定ではなく永続的な販売の予定はないのか? この熱烈な反響を目の当たりにして……、という流れで。
「印象として、世間の多くのニーズはやはりカットタイプにあると感じています。
現在は目新しさで“切れていないタイプ”にも注目は集まっていますが、あくまで少数派に支持されているのが現実でした。ファン層の棲み分けができているのでしょうね」(担当者)
事実、カットタイプを発売してから『よいとまけ』の売り上げは2割アップしているという。要は、そういう事なんだろう。

でも、その希少性に魅かれて復刻版に手を出すのも悪くない。その丸太ん棒なルックスに、北の息吹を感じるのもオツではないだろうか?
宣伝してる訳じゃないけど、5万個限定です。
(寺西ジャジューカ)